「データ分析に関する組織」を整理する

「データ分析に関する組織」もよくわからない

近年の「ビックデータ」や「データサイエンティスト」のブームをきっかけとして「データ分析」が広まった。人が増えた結果、自然な成り行きとして「データを扱うことが活動の中心にある組織」も増えてきた。

そしてご多分に漏れず全体像が整理されないまま個々人がそれぞれに定義の違う言葉を使っておりコミュニケーションに支障をきたしているようだ。

そこで「データ分析に関する組織」を題材に思いついたことを書いてみる。

「データ分析に関する組織」何を責任とするのか

「データ分析に関する組織」とは「データ分析」を責任とする組織である。ところがこの「データ分析」という言葉そのものが曖昧であり、それが組織について考える時の混乱を招いていると考えられる。

そこで「データ分析」が何をしているのかを考えてみると、

  • 提案

  • インテリジェンス

  • データ

の3つに分けることができる。つまり「データ分析に関する組織」とはこのいずれか、あるいは複数の仕事について責任を持っている組織ということだ。

それぞれの説明は「データ分析」の3つの仕事を整理するに書いたので、ここでは組織として見たときにどうなっているかを考えてみよう。

「提案」する組織は既存の職種とあまり変わらない

「データ分析」を掲げつつも実際には具体的な施策を提案することやその結果に責任がある。意思決定者や実行者を兼ねる場合もあり得る。特徴はデータの扱いに長けていること、それとデジタル領域が中心であることあたりだろう。

分析には責任がないので恣意的でもでたらめでも結果が出ればそれでよいと見なされることもある(結果とは、施策による成果ではなく顧客満足の場合も含む)。

経営者向けの提案であれば経営企画や経営コンサルティングがすでにあるので新興の「データ分析に関する組織」の活動領域は現場に近い。そのため分析と施策が近くなっており、実際の責任は施策であっても「データ」が前に出てきてことで既存の職種と違うように見える、という面はありそうだ。

しかし、仕事の内容を考えるとやはりマーケティングやコンサルティングの枠組みの中で得意分野がデータやデジタルである、という見方をした方がしっくりくることが多いのではないだろうか。

例えば推薦システムのように機械学習などで分析を行い、結果を自動的に反映するような仕組みを作る組織、というのが典型的な例だ。

もし既存の職種とまったく違う仕事であるように扱っているとしたら、「データ分析」という言葉の定義が明確でないため何となく別だと思っているか、自覚はあるがブランディングのためではないだろうか。

「インテリジェンス」を作る組織は存在感なし

特定の意思決定のための情報である「インテリジェンス」を提供する。施策の結果への責任はなく、その時点で適切な分析ができたかどうかが焦点になる。中立性を担保するために具体的な施策は提案しない。かといって誰のためかもわからない興味本位の分析を行ってもいけない。

日本においては「インテリジェンス」を作ることを責任とする組織どころか仕事そのものにあまり存在感がなく、データのブームもほとんど影響がないまま現在に至る。これは意思決定のための情報を要求する、という文化が日本の歴史上を見てもあまり存在してこなかったことが大きな原因であると思われる。

「data analyst」と「データアナリスト」の求人情報を見てみると文化の違いがよくわかる。「data analyst」ではあまり見かけない「問題発見」や「課題解決」といった内容が「データアナリスト」はよく出てくる。これは情報の範囲ではなく前述した「提案」の仕事である。

「インテリジェンス」という言葉を知らなくてもその仕事をしている場合はありえる。「調査部」のような部署や、組織ではなくとも「〇〇リサーチ」などの場合はその可能性がある。

ただし後述する「データ」との違いには注意が必要である。おもしろそうな分析やリサーチを数多く発表し、話のネタにはなっても意思決定には使われていないのあれば、それはインテリジェンスを責任とする組織とは言えない。

「データ」は分析をあまりしない

分析のためのデータを提供する。また、そのためにデータを準備することが責任である。依頼への対応は抽出スキルを自分で持っていないビジネスサイドと呼ばれる非エンジニアとの向き合いが中心になる。

「データ分析」の文脈でよく出てくる「BIツールで作るダッシュボード」はデータを提供する1つの方法なので、ほとんどこの「データ」の仕事である。ちなみに、SQLを学ぶことが直接役に立つのはこの「データ」の仕事だ。

「データ」の準備のために必要なテクノロジーや周辺の仕事も同じ組織で行うことがある。

  • データ基盤の構築・整備

  • データの獲得・集約

  • データ活用のインフラの構築

  • データマネジメント

  • 情報セキュリティ

「データ分析」とは言いつつ、「データ」の仕事では分析をする機会は多くない。そのため、分析をするつもりの人がこの仕事に充てられてモチベーションを下げる、というのは以前からある問題である。

分析が伴う「データ」とは、

  • 業界や社会の全体的な動向や予測

  • 全国の天気予報

  • 研究論文

などが当てはまる。これらは分析を行うが、特定の意思決定のために作られるわけではない(インテリジェンスとして使えることはある)。

本来は「インテリジェンス」とセットで「情報」である。しかし、「インテリジェンス」の存在が希薄なため「データ」だけが一人歩きしており、「情報」=「データ」という認識がさらに話がさらにややこしくしている。

「データ分析に関する組織」なのに「分析」するかでは分けられない

上記の3つの分類では「分析」を行うかどうかやそのレベルについて言及しなかった。なぜならば「分析」自体はだれでも行うことなので、「分析」をするかしないかでは分類ができないからだ。

料理を提供することで対価を得る人と、自分で食べるために作る人を考えてみるのがいいだろう。料理は多くの人が行うし、一般的に対価を得る人の方がそうでない人よりも料理の能力が高いことが期待される。それでも、料理をするかどうかだけで「料理人」かどうかはわからない。

例えば「データサイエンスチーム」は「大規模なデータと統計学や機械学習を使ってアウトプットをする組織」に使われたりするが、これだけではどの仕事をしているチームなのかは判断できない。「分析すること」は責任にならない。

インテリジェンス組織を考える

当初は「情報組織の在り方」みたいなのを考えていたのだけれども、やはり「データ分析」やその組織の整理から始めないとその先の議論ができない。そこで自分なりにそれぞれの組織の現状についてまずは考えてみた。

この分類で大丈夫そうならば次は以下のことを考えてみたい。特に最初の2つの可能性がまったくないのであれば残りは議論にならないので、まずはここに焦点を当てようと思っている。が、書いてみないとどうなるかはわからない。

  • 「インテリジェンス」の組織は必要なのか

  • 「インテリジェンス」の組織はどうしたら成立するのか

  • 「インテリジェンス」と「データ」は分ける方がいいのか

  • 「提案」と「情報」は同じ組織に共存できるのか

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