見出し画像

着信履歴

 今日のお話は、私自身が 一年前経験したものです。

 去年の7月3日の夜10時頃、昔 夜勤を一緒にしていた「佐藤」さんから電話があった.

 「なつめさん、お久しぶりです。佐藤です。覚えてますか?」

「佐藤さん? もしかして10年前 OO店で一緒に夜勤をしていた佐藤さん?それにしても、よく私の電話番号わかったね。」

「あっ 片桐さん(当時働いていた所の店長)にお聞きしました。」

「そうなんだ。で どうかしたの?」

「ぼく 糖尿病になってしまい、眼があまり見えてないんです。」

「眼に出ているてことは、重度のもの。確か君 マンガ家になるって、頑張っていたよね。大丈夫なの、マンガ。」

「いや 多分ダメですね。最初 右脚のかかとが壊疽してて、くるぶしから先、無くなちゃいました。今度は、眼です。」

「ぼく、もうダメです。最後に大変お世話になった、なつめさんにだけはと思って電話しました。」

「死に急ぐの止めた方がいいよ。自殺は悲惨だよ、死んだあと。」

「え~、それは承知しています。でも 生きる気力がなくなりました。今までありがとうございました。では、失礼します。最後になつめさんと話せてよかったです。」

 佐藤さんは新宿の区営住宅に住んでいたので 私はすぐに警察と彼の近所に住む後輩に頼み自宅に向かってもらった。私も直ぐ彼のもとに向かった。

 10分もしないうちに、後輩から電話がある。

「先輩 俺もさっき慌てたから忘れてましたけど。佐藤さん1週間前に亡くなっていますよ。戸山公園の箱根山の傍の木で、首を吊って。」

「えッ!! さっき電話があったんだよ、着信履歴だってちゃんと残っているし。」

「今日は佐藤さんの初七日。よっぽど なつめさんに会いたかったんでしょね。」

「・・・ ・・・。」

彼の着信は今も残っている。リコールしたら、また会話できるのだろうか。



私のようなものをサポートしてくださいましてありがとうございます。