クラフトビール いっぺ〜ま〜さんな件

コラム「クラフトビール いっぺ〜ま〜さんな件」

 7月も下旬にさしかかり、暑い夏真っただ中。まさに今ビールのおいしい季節である。
 ビールといえば。8年ほど前、アサヒスーパードライがアメリカとベルギーで開催されたビールコンテストで金賞を獲得した。 スーパードライというと、飛び抜けて個性的な味というよりは非常に優しくバランスの良い味というのが私の印象であり、それが海外で高く評価されたことに驚いたが、思えば20年以上前すでにアメリカでは日本の寿司がはやっていたのであった。
 寿司にはじまりとても繊細な味覚を有する食文化の日本だからだろうか、ビールの他にウイスキーやワインの味の繊細さやバランスの良さも海外と比べ抜きんでていると感じる。そんな味の酒を「個性が薄くつまらない」と評する人もいるが、それはつまりその味をおいしいと感じられるセンスをその人が持っていないだけなのだ。味覚とはその人の感性である。細やかで優しい味の酒を造るメーカーには、その味を生み出すに至った意図とこだわりがあり、その味を好きだというファンがいることがその酒の価値である。
 十数年前からの地ビールブームの中で、市販のビールに比べ少し値の張るクラフトビールを好むファンが増え続けている。多様な味覚を楽しめる価値観が世間に広がった結果だとして喜ばしいことだと思う。
 今はコロナ禍でなかなか旅行もしづらい日々であるが、旅行で国内をあちこち行くたびに、その土地の酒造所でそこの酒やビールを飲むのが好きだった。やはり日本、県外の酒はどれもおいしいのであるが、ここ沖縄のクラフトビールも例外ではなく侮れないと思う。
 県内にはおよそ10カ所ほどのクラフトビール酒造所があり、どこも多彩で素晴らしい味のビールを生み出している。この暑い季節、普段ビールはこだわらないという方はぜひ沖縄のクラフトビールを試してはどうだろうか。 飲食店や酒造所へ出かけなくとも、今の時代便利なことに通販があるので、沖縄だけと言わず全国各地のクラフトビールを飲み比べてみるのも楽しいはずである。 お水のおいしい県のビール、お米の産地のビール、 その土地の特産品の果物を使ったフルーツエールなどなど、決してひとくくりにできないあまたの味の世界へ、いざ、んじめんそ〜れ。
(2022年7月21日沖縄タイムス「唐獅子」にて発表)

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