宮城、痔になったってよ

コラム「宮城、痔になったってよ」

 本当に自分に厳しい人間なら言葉を選ぶ努力くらいするはずである。「僕はピーマンが嫌いだ。 ピーマンなんか世界中からなくなってしまえ!」というような文章を批評と称して発表する人間ももとよりそんな文章を何も考えず掲載する新聞も恥ずかしい限り。なので沖縄タイムスの信用を落としてしまわないためにも私は自分を律する姿勢や言葉を選ぶ努力を怠らないよう努めていく所存。今まで新聞に文章を載せたことが全くなかったため、コラムで何を発表すればいいのか迷うが、まず初めに私が痔を患った時のことを記す。
 私は長年デスクワークで座りっぱなしだったのに加え、かなりの猫背だったため、三十を過ぎた辺りから腰痛がひどくなってきた。腰痛を和らげるために温泉通いをしてみたがそれではお金がかかるので、根本的な解決策として姿勢を良くする方法を考えてみた結果、スタンディングデスクにしようと思い立った。立ったままの姿勢でパソコン作業のできる環境にしてみたところ、数日後には腰痛もすっかり治まってしまった。
 これは大正解だったなと喜んだのもつかの間、また新たな悩みの種が。「肛門が痛い」。指で触れてみるとプックリとしたイボが肛門にできていた。これが用を足す際とても痛い。ある日まっ黒な大便が出た際は「大腸がんッ?」 とパニックになったが、思い返してみると前日イカ墨そばを食べていたのであった。
 とにかく気が気でない日々。 ゲイバーのママにその事を相談したところ「それはイボ痔よ。肛門科へ行きなさい」と助言されたが、貧乏性の私は病院へ行くお金が惜しく、家にある軟こうを毎日イボに塗った。
 が、それでイボ痔はなかなか治らない。ついにお金を出す決心をした私は薬局でボラギノールを購入し患部に塗ってみたところ、これが面白いように痛みが引き、数日後には治ってしまった。(お金が惜しいからとりあえず適当なものを塗っとこう)という思考は本当によくないものである。
 どうやら立ちっぱなしの姿勢だと肛門のうっ血につながり痔になりやすくなるようだ。 座りっぱなしは良くないが立ちっぱなしも駄目、ほどほどにという教訓だった。
(2022年7月7日沖縄タイムス「唐獅子」にて発表)

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