那覇でパレードやるってよッ

コラム「那覇でパレードやるってよッ」

 今月20日レインボーパレードが那覇で開催されるとのことで、主催のピンクドット沖縄が参加者を募集している。沖縄市レインボーパレードから10年、ついに那覇での開催であり、感慨深い。「パレードは日本では不向きだ」という声も昔から多くあるのだが、あいにく現在の日本のLGBTQへの差別、ひいては人権意識の低さは目も当てられないレベルで嘆かわしい。
 同性婚を次々認めている海外の国々では、以前と変わらず社会に何の悪影響も出ていないというのに「同性婚を認めたら社会が滅ぶ」と発言するおかしな政治家がいまだにいる。「同性愛者らは種の存続で成り立つ自然界の摂理に反する」と言う人が後を絶たないのも不思議。 1500種類以上におよぶ動物や昆虫の同性同士のつがいの確認資料が数十年前からあるのだが。
 LGBTQ差別に限らず、人種差別、地域差別、性差別をする人間の内面には、自分の人生観や理念を揺るがす要素を持っている対象を否定したい心理が奥底にある。そう簡単に揺らいでしまう人生観や理念がそもそももろいのであり、問題はそんな人間を量産する社会の在り方や、差別や暴力を正当化し他者を攻撃しなければ自尊心を保てない人間の内面にないか。
 それに現在少しは良くなったのかもしれないが、数年前まではパレードなどLGBTQ関連の運動やイベントが開催されるたび、報道の見出しに「同性愛者ら、理解求める」「当事者ら、私たちを受け入れてと訴え」などと表記されていた。しかしそれは正確には違っていた。当事者らは「多種多様な人々が生きているのが社会なのだということを理解してほしい」のであり、「同性愛を理解して」などと訴えてはいない。他者を完全に理解するなど不可能。〈理解〉という漠然としたことより尊重〉と〈距離感〉 こそ重要である。それを今まで報道や社会は汲みとってきただろうか。何やらむちゃくちゃなことを訴える面倒な人たちというレッテルを貼ることで目を背けてきたのではないか。
 自分らしく生きる他人を尊重できる人間になる前に、己が自分らしく生きていけるようになる課題はあり、そのために向き合わなければならないことがないだろうか、誰にも。 パレードに期待。
(2022年11月10日沖縄タイムス「唐獅子」にて発表)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?