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僕は音楽をぜんぜん知らない。でも、大切なのはそこじゃない。

ベルリン在住のミュージシャン、マニュエル・ゲッチングさんがなくなったのは2022年の12月のこと。実は僕、お名前を覚えていませんでした。本当にごめんなさい。でも、彼の代表作「E2-E4」のことは覚えている。むしろ、僕にとって、とても思い出のある作品で、とても大切な曲。

小さい市松模様と大きい市松模様

京都にMeditationsというCD屋さんがある。コアな音楽ばかりが集まっていて、音楽が好きな人しか来ない店。敷居の高さが、圧倒的にかっこ良い店。僕がそこを初めて知ったのは、BRUTUSの「チルアウト」特集だった。大学生だった僕は、他の大学生と同じようにBRUTUSやPOPEYEの世界に憧れていたんですね。そのころは古民家を改築した店舗だった。膨大な量のCDやレコードがあった。当たり前だけど。

「くっそ、かっこいい………でも知ってる曲が全然ない………」

昔から音楽は好きでした。でも詳しいわけじゃなかった。クラブミュージックが好きだけど、もっぱら流行りの曲や簡単に情報が出てくる日本人アーティストの曲が中心。洋楽は全然わからなかったんです。

困った僕は、店員さんに声をかけました。

「音楽のことは好きなんですが、正直、全然詳しくないんです。好きなアーティストはNujabes。ダンスサークルに所属していたので、HOUSEとかも最近は聞いています。何かおすすめはありませんか?」

まったく、無知ゆえの堂々さが、なんとも恐ろしい………。

どんな会話をしたか覚えてないけど、その日、僕は「E2-E4」を持って帰った。今でもたまに聞く、大切な1枚。好きな作品です。でも………お名前を覚えていませんでした。本当に失礼な話ですが…。でも、好きなことに変わりません。亡くなったと聞いて、メルカリでレコードを探して購入。うちには、小さい市松模様と大きい市松模様がある。

一見さんの若造に、ちゃんといい音楽を教えてくれた。グッドバイブスだよね。ありがたいよね。

こういう「瞬間」のために生きてるんじゃない?

そんな状態は今も変わってない。グラストンベリーに行ったけど、正直、知っているアーティストはわずか。一緒に行った日本人の友だちが進めてくれるアーティストを見に行ったり、タイムテーブルのジャンル欄から「HIPHOP」を探して見に行ったり。

それでも圧倒的に楽しかった。「人生で一度は行ってみたい」なんて思う場所はいろいろあるけど、グラストンベリーは一度じゃ足りない。何度だって行きたい。毎年行きたい。本当に楽しかった。最高にグッドバイブスな場所だった。

とは言え、あのとき見たアーティストの名前は正直、自力では思い出せない…。音楽や名前を聞けば「その人のライブ、見た!」って言えるんだけど。要するに、名前を覚えるのが苦手なんですね。あはは…。

でもさ、新しいものと出会えるって、ぼくにとって、すごく大事なんだよ。もっともっといろんなものを知りたい。見てみたい。その中で自分の感性に引っかかってくるものがあれば、もう最高。

その時の感動は言葉では言い表せない。こんな感じ。

まさに、He became the music. でしょ。グッドバイブスを放ちまくりでしょ?

ナイル・ロジャースが "The funk is still alive"って言ってんのやばくない?

https://twitter.com/nilerodgers/status/1605958947160064000


このTHE D Sorakiさんのダンスを見て「こういう瞬間のために生きてるんだよ」って思った。彼はこの曲が大好きでいつも聴いてる曲だったらしいんだけど、そういうことじゃなくてさ。もう最高じゃない?


この動画は「バトル」だし「世界大会」だけど、この瞬間、相手がどうこうじゃなくなっちゃってると思うんだよね。彼と音楽の間に、身体があってダンスがある。音楽が見えるし、彼の喜びがはっきりと見える。こういう瞬間にもっともっと出会いたいじゃん。そういう瞬間のために人間って生きてるんじゃない?絶対そうだよ。こういう瞬間があるから、生きてるのよ。だから、フェスに行きたいのよ。

2022年でダントツのバッドバイブス。例の炎上の話。

さて…………2022年でダントツのバッドバイブスの話もしようか。それはサマソニの炎上事件。過去にも何回か炎上したことはあるんだけど、今回ほどじゃなかったかなぁ…。いやはや…。(インプレッション数は275万でした…)

炎上すると、知らない人からたくさん反応が来る。暴力的な言葉も飛んでくれば、自分の中にある偏見や固定概念に気づかされる意見もあったり。それらの中でも「まぁ、なるほどなぁ」と思ったのが、こういう意見。

ようするに「ふざけて真似したわけじゃない」っていう話。確かに、僕は彼ではないので彼の本意はわからない。「僕の目には」明らかにふざけて真似しているように見えたけど、それは確かに僕の憶測でしかない。なるほど、いろんな考え方があるねと思った。

でもさ、この人のツイートにもあるように、彼らのステージ上の振る舞いと、それを見たオーディエンスには笑いがおきたわけ。それがすべてじゃん。

最悪じゃん。めっちゃバッドバイブスじゃん。
言う方も、笑う方もダサいじゃん。

こういう新しい出会いは要らないよ。

ちなみに、彼らからのアンサーはない(と思う)。

こういう写真が炎上の次の日にアップされて

こういう動画も見つけたけど。

いや、ずるくね?まぁ、いいけどさ。

「優れたショップは、客を消費させるだけでなく制作へと駆り立てる」

「グッドバイブスとか、バッドバイスとか、なにそれ?」って思った?いや、そうだよね、曖昧すぎるよね。都合がいい言葉だよね。いや、でもさ、確かにあるのよ。グッドバイブスって。

2023年の最初の映画は「アザーミュージック」でした。ニューヨークのタワレコの前に店を構え、タワレコには置いてない「OTHER MUSIC」を扱う今はなきレコード屋のドキュメンタリー。いやぁ、これも本当にグッドバイブスな映画だった。最高でした。ニヤニヤしながら見てた。

分筆家の長谷川町蔵さんのレビューに「優れたショップは、客を消費させるだけでなく制作へと駆り立てる」とあった。本編にも、ただの店舗ではなく「コミュニティーセンター」や「学校」と表現する人がいた。

これって、優れたショップの話にとどまらないと思うんだよね。フェスもそう。音楽やダンス、アート作品なんかもそうかもしれないって思う。(実際、ぼくはTHE D Sorakiさんのダンスを見て、またダンス習いたいなぁって思ってる)

これは僕にとってのグッドバイブスなんだよね。こういうものをぼくも作りたい。こういう場所づくりに関わりたい。そんな2023年にしたいなと思う。あともうひとつ。海外取材行きたいです。仕事ください。

というわけで、2023年の抱負と2022年の忘れ物の話。今年もよろしくお願いしまーす!


将来的に「フェスティバルウェルビーイング」の本を書きたいと思っています。そのために、いろんなフェスに行ってみたい。いろんな音楽に触れてみたい。いろんな本を読みたい。そんな将来に向けての資金にさせていただきます。