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たった1つのドーナツ

私は現在20歳の大学生です。

おじいちゃんは私が高校1年生の時に85歳で亡くなってしまいました。

その報告を聞いたのは学校から帰ってきた時でした。その時はテスト期間だったため、私は学校に残ってテスト勉強をしていました。

家に帰ってきて、その報告を母親から聞きました。

正直衝撃的で非常に残念でしたが、病気ではなく寿命だったので、まだよかったという気持ちもありました。

おじいちゃんは腎臓に病気を持っており、それで苦しんでいたことを知っていたため、私も心配していました。

おじいちゃんの葬式の時に、叔母さんからいつも私のことを話しててくれたことや、早くおばあちゃんのところ(天国)に行きたい、と言っていたを聞きました。

おじいちゃんは私が思っている以上に辛かったのだと思います。

でも、私の前では常に笑顔でした。

おじいちゃんともっと話したかった。もっと気づいてあげるべきだった。後悔は数え切れないし、申し訳なさもたくさんあります。

おじいちゃん、天国から見ていてください。

俺、頑張ります。


おばあちゃんは私が5歳の時に病気で亡くなりました。

突然の報告でした。

どんな冗談でも信じていた私が、唯一信じなかった事実です。

お母さんや叔母さんが泣きながら私に「おばあちゃんにさよなら言ってあげて」と言ったこと。

おじいちゃんがおばあちゃんを火葬する前に言った最後の言葉「ばあちゃん、天国でも元気でな」

当時5歳だったのですが、未だに鮮明に覚えています。


おじいちゃんは私が高校1年生の時まで一緒にいたので、一緒に夜ご飯を食べたことやプロ野球を見たこと、高校受験で合格した時も部活で全国大会に行った時も「おめでとう!」と言ってくれたことなど、たくさんの思い出がありますが、おばあちゃんは私が5歳の時に亡くなってしまったので、ほとんど覚えていません。


しかし、一つだけ覚えていることがあります。


それは、おじいちゃんおばあちゃんと一緒にドーナツを食べたことです。

私の家の隣がおじいちゃんおばあちゃんの家なのですが、たまたま遊びに行った時におばあちゃんがドーナツを買ってきてて、一緒に食べました。

小さい手で大きなドーナツを持ち、頬張りました。

たった1つのドーナツが15年経った今でも、私とおじいちゃんおばあちゃんを繋ぐ唯一の思い出として残っています。


とても素敵なことだと思います。


なので、私は大学生になった現在、ミスタードーナツでアルバイトをしています。

高校時代に対人恐怖症や心因性発声障害といった声の病気を患いました。

しかし、それでも、ドーナツ屋で働きたかったのです。

病気がちっぽけに思えるくらい、ドーナツ愛がありおじいちゃんおばあちゃん愛がありました。


しかし、私がアルバイトを始めたと同時に、父親からお母さんが手術をしたことを聞きました。

手術は成功しましたが、一生治らない病気で定期的に手術が必要らしいです。(なお、命に別状はないらしいので、安心しました。)


辛い、、、


私は一人暮らしをしており、両親とはなかなか会うことができません。入院している母の元に向かうことも考えましたが、母は私がお見舞いに行くことよりも、私が勉学やアルバイトなど、自分のことを頑張ることを望んでいるのだと思いました。

私がお見舞い言った場合、嬉しさもあると思いますが、それ以上に息子に大学やアルバイトを休み、わざわざ遠くから来てもらったことに、迷惑をかけてしまったという申し訳なさを感じる気持ちの方が強くなるのではないのかと思いました。

なので、母の元には向かわずに、勉強を頑張り、そして、アルバイトを頑張りました。

正直、大変なことや辛いこと、たくさんありました。

仕事も覚えることが多く、パートさんや先輩に迷惑をかけてばかり、失敗してばかり、接客業なのに病気から声が出なくなってしまう。家に帰っても母親が心配。

本当に辛かったです。夜寝れなくて、そのままアルバイトに行った日もありました。

アルバイトに行く時も、また失敗して迷惑をかけてしまうという恐怖から、家を出る時に手足が震えたり、アルバイト先へ向かう途中、足が止まることもありました。

でも、私にとってドーナツはたった1つの思い出です。きっと、天国からおじいちゃんおばあちゃんも見守ってくれています。

私よりも母の方が辛いはずです。

そう思うと頑張れました。そう思えたから、頑張れました。

私はお金のためにアルバイトしているのではありません。私のように1人でも多くの人に私のような思い出を作って欲しいのです。

笑顔でドーナツを食べてくれる。それだけで充分です。

今もミスタードーナツで働いていて、今後も大学を卒業するまで続けるつもりです。

母の病気もだいぶ良くなってきて仕事も再開したそうです。


そして、

私もいつか店員としていう、「いらっしゃいませ」や「ありがとうございました」が最後になる時がきます。

その時、おじいちゃんおばあちゃんも一緒に言って欲しいな。


天国から


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