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砂に埋もれる犬 - しんすけの読書日記

子供の貧困と親からの虐待がテーマだ。
読み始めは辛さを感じた。ハードカバーで500頁近くある本を果たして読み終えることができるのだろうかと思った。

桐野夏生『砂に埋もれる犬』

家では子供が腹を空かしているのに母親が男とゲーセンで遊んでいる箇所に来たときは、腹立たしくて読むのを止めようとさえした。

だが今の日本ではこうした例は珍しくない。ニュースで子供が虐待されたり放置されて死んでいくのをよく観る昨今だが、ニュースになった時はもう手遅れだ。

そう考えながら150頁ほど読み進むと、少しだけ周りに温かい目が見えてくる。
これが小説だからだろう。現実は、温かい目なんて皆無に近い。
あったにしても、その温かさは虐待児には通じない。

温かい目も虐待児には理解不可能だ。生まれた時から人に親切にしてもらった経験がない者は、「ありがとう」すら口にすることはできない。
一家団欒の夕食でさえ、彼らにとっては苦痛になる。
学校でもそういう子供はいじめの対象となる。クラス全員が「ウザイ」「キモイ」と、無視をする。手出しはしないがいじめられる方の精神的な負担はかなり大きい。表面はお坊ちゃんやお嬢ちゃんだが、内面は悪魔の集団と言ってもいい。

児童相談所はあっても、現状をカバーするには至っていない。
子供たちが物心つく前に児相が問題を解決するのが理想だが、行政に福祉の理念が薄い日本では絶望的としか言えない。

子供を放置するだけでなく老人には姥捨て山政策を推進する行政には、怒りさえ感じている。
桐野夏生は、その怒りで本書を書き綴ったのだろう。

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