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夏 第198回 『魅惑の魂』第2巻第2部
彼女は沈黙が長く続いていることに気づいた。もうフランクが面前にいないことを、そのときになって知った。彼女は振り返り、彼を見て微笑んで、立ち上がって言った。
「あら、ごめんなさい! このままでいきましょうよ! わたしたちはとても仲が良いですよね、友達として!」
「友達でない他のほうが… そうでなければ、もっと良いと思わないんですか?」
彼女は首を振った、(いいえ。ちがう!)
「そういうことか! ここれで三回目の受験も不合格ってことだ!」と彼は笑った。
彼女も笑った、それから彼のところまで行って悪戯をするような素振りで言った。
「でもせめてですから、わたしが二回目の受験で拒んだものを差し上げましょうか?」
そして、彼の首に腕を回し、キスをした… 愛情たっぷりのキスだった。だが間違いはなかった。友達としてのキスだった…
フランクも間違ってはいなかった。 彼は言った。
「そいうことですか、二十年後には三度目の合格があるかもしれないって、希望を持って良いんですね」
「いいえ」アネットは笑いながら言った「もうお婆さんですよ! お友達、 あなたはだれか結婚なさることよ! あなたは選ぶだけでいいんです。すべての女があなたを待ってますわ」
「そのなかに、あなたはいないんですね」
「ええ、わたしはいまのままで、変らないでいます」
「そうですか、でも解るはずです。あなたは罰を受けて、五十歳過ぎて結婚するでしょう」
「あらまあ、わたしは死んでますよ… それまでは!…」
「それまでは、修道女みたいな生活なんですか…」
「それも楽しいことかもしれません… あなたに解らなかもしれませんね」
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