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生ごみは「可燃(燃える)ごみ」?

はじめに


こんにちは。私たちは、食品廃棄物の堆肥化を普及させることで、信州大学キャンパス・松本市のゼロカーボンやゼロウェイストを目出す学生団体「信州大地プロジェクト」です。
私たちが住む松本市では、生ごみを可燃ごみに出しています。今回は、生ごみは本当に可燃(燃える)ごみなのかを調べてみます。

生ごみは「ごみ総量」のどれくらいを占めるのか


松本市に住む私たちは、1年間で14,757tの生ごみを家庭から捨てていることが推定されました。(2019年の推計量)
※詳細、計算過程は前回のnote記事を参照ください。

松本市の可燃ごみの収集量は、78,742t(令和元年(2019年))であるため、そのうちの約19%、可燃ごみのおよそ2割の重量を家庭からでる生ごみが占めていることになります。

家庭からでる「ごみ」に占める生ごみの割合は?


松本市から回収されるごみ総量は、89,538t(2019年)で、そのうち家庭系ごみの量は、38,843tです。人口で割ると、約440g/1人1日で、1週間におよそ約3.1kg/人のごみを出していることになります。1年間で14,757tの生ごみが家庭から捨てられていることから、1人が1日に排出する家庭からの生ごみの量は約167g、1週間に出す生ごみは約1.17kg/人という計算結果になります。私たちが1週間に出すごみの中には、約1kgの生ごみが混ざっている…のですね。

生ごみのほとんどは水?


では、生ごみには一体何が含まれているでしょうか?内訳をみると、84.3%が調理くずであことがわかります。調理くずは、肉類・魚類の骨や卵の殻、野菜や果物の皮・芯がほとんどではないでしょうか?では、これらの野菜や果物の水分はどれくらいなのかというと、重量のおよそ80~90%以上となっています。生ごみのほとんどが野菜や果物といった水分量が多いもので構成されていると言えます。

「松本市食品ロス削減推進計画」より引用


食材が水分をどのくらい含有しているのかを表すには、含水率という言葉が使われます。含水率とは、食材の全重量に対する水分量の割合を表すものです。例えば、ニンジンの含水率は90.4%であるから100gのニンジンは90.4gの水分と9.6gの固形物から構成されています。
松本市では、生ごみは可燃ごみとして区分されます。ですが、『生ごみは可燃ごみか』の著者、福渡和子氏が指摘するように、「生ごみを燃やすことは水を燃やすのに等しい」のです。

生ごみの焼却はカーボンニュートラル?

「紙・生ごみ・草木を焼却しても二酸化炭素が発生しますが、植物が成長過程で大気中から吸収した二酸化炭素に由来するものであるため、吸収と、焼却による排出でプラスマイナスゼロ(カーボンニュートラル)となり、大気中の二酸化炭素は増えないことから、温室効果ガス排出量には含めない」
(「ごみ減量から始めよう脱温暖化」横浜市ホームページより)
というのが一般的な見解です。つまりは、有機物の焼却の焼却はカーボンニュートラルだから、焼却時に発生した二酸化炭素は換算しなくてもよいということになります。ですが、水分を多く含む生ごみを燃やして、カーボンニュートラルと言えるのでしょうか?
同氏は、「野菜も果物も確かに有機物だが、カーボンニュートラルと言えるのは、固形物についてだけである」と指摘します。例に出したニンジンなら、100gのうち、固形物の9.6gを燃やすことはカーボンニュートラルですが、残りの90.4gの水分を気化させるために要したエネルギーが出す二酸化炭素は、環境負荷を与えるものとしてカウントする必要があるということです。

「生ごみを焼却≒水を燃やす」ことによるエネルギーロス


さらに同氏は、「水を焼却するとは、水を水蒸気に変換することで、焼却炉内で水を水蒸気にするには、炉内で発生する焼却エネルギーを使うため、当然のことながら焼却効率は低くなる」と述べます。

実際、私たちが毎週捨てていると推定される生ごみ1,170g/1人がどれだけの焼却エネルギーを要するのかを計算してみます。仮に生ごみの水分率を85%とすると、生ごみ1,170g/1人1週の水分量は、994.5gです。

・水1gを0℃から100℃にするのに要するエネルギーは、100カロリー
・100℃の湯、1gを完全に気化するには約540カロリーのエネルギーが必要
・常温の水を1g気化するには、約600カロリーのエネルギーが要る

以上のことを踏まえると、私たちが1週間に出す生ごみに含まれる水分量を気化するには、596,700カロリー(2,506,140[J])の熱エネルギーが必要にります。

この熱量はどれくらいなのでしょうか?例えば、私たちが500wの電子レンジを1分間使用した時の発熱量[J]はいくらでしょうか?

1分=60秒
発熱量=Wt=500・60=30,000[J]

になります。

2,506,140[J]の熱エネルギーは、電子レンジを何分動かした発熱量になるでしょうか?
2,506,140[J] / 30,000[J]=83.538(分)
です。

私たち1人が1週間に家庭から出す生ごみに含まれる水分を気化するのに、ゴミ焼却炉では、電子レンジ1時間20分以上も動かした発熱量が必要になります。可燃ごみは、松本クリーンセンターで焼却処分されています。その一般廃棄物の合計は、100,168t(2019年)です。この廃棄物量に、松本市に住む私たちが出した生ごみ量が約15%を占めるのです。その生ごみに含まれる水分量は、焼却の熱効率を押し下げていると言えるでしょう。


引用文献

  1. 松本市DX推進部,2022,「令和3年版松本市の統計 G 衛生・公害・環境」,松本市ホームページ,2022年10月27日閲覧.

  2. 松本市環境・地域エネルギー課,2022,「R3年 一般廃棄物処理計画進捗状況」,松本市ホームページ,2022年10月27日閲覧.

  3. 松本市DX推進部,2022,「令和3年版松本市の統計 B 人口」,松本市ホームページ,2022年10月27日閲覧.

  4. 松本市環境・地域エネルギー課,2021,「松本市食品ロス削減推進計画」,松本市ホームページ,2022年10月24日閲覧.

  5. 食品にはどれぐらい水分が含まれているか」,料理科学の森,2022年10月27日閲覧.

  6. 福渡和子,2015,『生ごみは可燃ごみか』幻雪舎.

  7. 松本市環境・地域エネルギー課,2022,「松本市一般廃棄物処理計画」,松本市ホームページ,2022年10月27日閲覧.


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