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「美味しい」が地域をつなぐ。伝統野菜と加工施設から考える中野市豊田地区の未来(第4期 地域紹介)

こんにちは、信州つなぐラボ事務局の桒原(くわはら)です。

第4期信州つなぐラボでは、「食文化とコミュニティ」を1つのテーマとして、農産物加工施設と伝統野菜を通して地域の未来を考えていきます。舞台は「長野県中野市」。

今回は、中野市の地域情報と、すでに地域の課題に取り組んでいる地域サポーターを合わせてご紹介します。

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「うさぎ追いし、かの山〜♪」と歌われる唱歌「故郷」。
実は、この曲の舞台が、長野県中野市ということはみなさんご存知でしょうか?作詞をした高野辰之氏は、ここ中野市出身。生まれ育ったこの地の風景が、歌詞のモデルになったといわれています。

そんな中野市は、全国でも有数の園芸農業地帯。きのこ、ぼたんこしょうといった野菜や、ぶどうなどの果物の栽培が盛んです。中野市全体で、6次産業の推進にも取り組んでおり、女性だけで運営する農産物加工施設のほか、さまざまな活動を通して風土や食文化の魅力を伝えています。

①ふるさとの味を伝承する農産物加工施設

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組合長の西野 三恵子さん(写真右)、副組合長の長沢 京子さん(写真左)

地元で採れた農産物を使い、加工品づくりを行う「中野市豊田農産物加工施設利用組合」。中野市のテーマ①では、食を軸につながり合うお母さんたちと一緒に、地域内外の人が交じりあう場づくりを考えていきます。

平成10年に組合を設立。現在、会員人数45名の登録があります。菓子部・おやき部・みそ部の3部門で構成され、材料となる農産物の栽培から、商品開発と加工、イベント出店まで、すべて地元のお母さんたちが手掛けています。

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作業場① アップルパイ、おやき、味噌、漬物などの営業許可を取得されています

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作業場② もちろん包装やラベルシール貼りもお母さんたちによる手仕事

地産地消にこだわり、お母さんたちが毎日ひとつひとつ愛情を込めて手づくりしている商品は、どれもなんだかホッとするような美味しさです。

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完熟りんごをふんだんに使った「おひさまのりんごパイ」、地元の季節野菜を包んだ「あちゃまおやき」、無添加で昔懐かしい味わいの「あちゃまみそ」など

元々は、農家のお嫁さんや若い人たちが地域の勉強をする機会として集まっていたことがはじまり。ただ勉強するだけではもったいないと「ふるさと味の会」を結成し、技術伝承の場として広がっていきました。次第に「つくるだけじゃなくて、売れる場所がほしい」と声が上がり、旧豊田村(現中野市)に働きかけたそう。
「とにかく加工施設が欲しい!欲しい!と村会議員さんにも頼んだりして、設立当初は苦労があったようですね」と、現在4代目の組合長を務める西野さんは話します。

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組合設立から23年。3年後に市の指定管理から外れることをふまえた組織運営方法の見直しや、組合員の高齢化に伴う後継者の育成など、難題が立ちはだかります。

「自分たちで欲しい!と言って作ってもらった施設だから、ここで潰すわけにはいかない。続けていくには課題が大きいけれど、農村女性の拠点として大事な場所なので、無理のない範囲で継続できる関わり方を一緒に考えてもらえたらありがたいですね」

②中野市を代表する伝統野菜「ぼたんこしょう」

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唱歌「故郷」の歌詞に登場する「かの山」のモデルといわれる「斑尾(まだらお)山」の麓、中野市永江地区。このエリアを中心に生産されている「ぼたんこしょう」はご存知ですか?
まるでピーマンのような果肉と、唐辛子のような辛さを持ち合わせているこの野菜。ピリッとした辛さのなかには甘みもあり、クセになる美味しさが魅力です。

中野市のテーマ②では、そんなぼたんこしょうの魅力を発信し、ファンをつくる方法を考えていきます。

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ぼたんこしょう農家の松野冨子さん。「斑尾ぼたんこしょう保存会」のメンバー

ぼたんこしょうの栽培は古く、昭和初期から作られており、平成20年に長野県の「信州の伝統野菜」に選定されました。「ぼたんこしょうよりもピーマンの存在を後から知った」という農家の松野さんは、小さい頃から日常的によく食べていたと話します。

伝統野菜に選定された同年には、ぼたんこしょうの種の保存と普及を目的とした「斑尾ぼたんこしょう保存会」が発足。これまで各農家独自の方法で行っていた自家採種から栽培方法の研究を行い、今日でも良質な種を継承し続けています。

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生産者の方たちが丹精込めて栽培しているぼたんこしょう。苗がある程度大きくなるまでは、寒さよけの為に不織布をかけて手入れをしたり、除草剤代わりとして通路に新聞紙5枚と藁を敷き詰めて苗を守るなど、手間暇かけて大切に育てられています。

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中野市のふるさと納税返礼品にもなっているぼたんこしょうの加工品

松野さん「栽培を続けている理由は、自分が食べて美味しいと思うから。後継者問題など課題はあるけれど、美味しいからこそ、これからも残していきたいですね

手が掛かることや生産者の高齢化など守ることの難しさもあるなかで、中野市の風土を表す魅力の詰まった伝統野菜を、後世に受け継いでいきたいという、生産者の方たちの強い想いが感じられました。

地域サポーターの紹介

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今回、中野市の地域サポーターを担当するのは、中野市地域おこし協力隊・榎本郁美さんです。

東京都出身、埼玉県育ちの榎本さんは、令和2年の4月から地域おこし協力隊に着任。元々、自然が好きで農業にも興味があったことから「食から農業を活性化すること」をミッションに掲げ、ぼたんこしょうを中心に中野市の農産物や地域の魅力を発信しながら活動されています。

榎本さん「週1回、ぼたんこしょう保存会の活動に参加して畑の作業をしながら、その様子をぼたんこしょう日記で発信しています。それとは別で個人的に松野さんのところへ行って、加工品の作業や畑の手伝いをすることも。もはや、松野さんの孫みたいな感じですね(笑)」

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ぼたんこしょう畑での作業中、ふと見上げた景色にも癒されるそう

榎本さん「加工施設では、お弁当づくりのお手伝いや、アップルパイをつくる体験をさせてもらったり。長沢さんちの田植えの手伝いをして、お家のご飯にも呼んでいただいたりと、日頃から仲良くしていただいています」

食べ物の美味しさ、景色の綺麗さ、ちょうどいい田舎感……、活動するなかで見えてきた中野市の魅力はたくさんあるそうですが、この地で出会った温かい人たちとの関わりも大事な要素だと榎本さんは話します。

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斑尾山の麓、中野市永江地区梨久保の風景

榎本さん「食を軸にしていろんな人たちが集まり、そこで生まれているコミュニティがとても素敵なので、その部分を含めた地域の温かさみたいなものをもっと伝えたい。ただPRするんじゃなくて、そこにある生産者のストーリーも含めて、地域の魅力を伝えられるような、そんな方法を一緒に考えてくれる仲間に出会えることを楽しみにしています!」

信州つなぐラボ第4期、中野市では「食文化とコミュニティ」をテーマに、資源豊富な中野市の「食」にスポットをあて、地域住民とつながり、新たな可能性を開く人を募集します。

食を軸に育まれてきたコミュニティのなかで、中野市の地域との新しい関わり方を一緒に考えてみませんか?

信州つなぐラボのプログラムに関する詳細はHPをご覧ください。

撮影:小林直博


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