見出し画像

有効求人倍率とは?コロナの影響は?【ニュースでよく聞く政治・経済キーワードをわかりやすく解説!①】

こんにちは、しんです。

今まで学んできたことや、過去に様々な場で皆様にお伝えしてきたことを一つの形にしてみようということで、noteを始めてみることにしました。

僕の記事を読むことで、「世の中の見え方」がすこしでも広がったらいいな、それによって一人一人が少しでも生きやすくなればいいなと思います。

まずは、「有効求人倍率」について簡単にまとめました。

「政治・経済の勉強をしている学生」「採用をされる中途担当の方」「転職を考えている方」「人材業界に関わる社会人の方」「情報リテラシーを学びたい方」「投資で景気の指標を勉強されたい投資家」の皆様に見ていただけたら嬉しいです。

1.有効求人倍率とは

ニュースで以下のような文言を見たことはありませんか?

9月の求人倍率1.03倍に低下 非正規123万人減

2020年10月30日の日本経済新聞の記事の見出しです。(https://www.nikkei.com/article/DGXMZO65640020Z21C20A0MM0000/)

そもそも「有効求人倍率が低下した」とはどのような状況なのでしょうか。

有効求人倍率とは、

有効な求人の数(月間有効求人数)を、有効な求職者の数(月間有効求職者数)で割った値

のことを言います。(厚生労働省が毎月発表しています)

上記の「有効」とは、公共職業安定所(ハローワーク)に登録されている、という意味です。また、先月からの繰り越しされたものと当月に新たに登録されたものを合計して「月間求人求人数」「月間有効求職者数」といいます。

有効求人倍率」とは一言でまとめると、

直近2ヶ月でハローワークで仕事を探している求職者一人に対し、いくつの仕事があるか

を表す指標と言えます。

ですので、「有効求人倍率が低下した」とは一人あたりの仕事が少なくなっているということ、つまり、求職者にとって仕事が見つかりづらく、逆に企業にとっては採用しやすくなっていることを意味します。

また、有効求人倍率は「景気動向指数」(内閣府が毎月発表)という、景気が良いのか悪いのかを判断する指数の一つの材料にもなっています。有効求人倍率は、単純に仕事の有る無しを表す指標という意味に加え、景気の良し悪しを判断する重要な指標にもなるということもポイントです。(後述)


2.「有効求人倍率」の注意点

「有効求人倍率」について、数字を解釈するうえで注意しなければいけないポイントが何点かあります。

〇「正社員」以外を含む数字であること

上記の日経の記事もそうですが、ニュースでよく見る「有効求人倍率」は正社員以外の求人や求職者も含んでいる値のことです。

正社員有効求人倍率」というものも別で存在しており、例えば直近の2020年9月の値は0.78倍となっております。求職者は正社員を目指す方が難しいということですね。

※ただ、この「正社員有効求人倍率」も注意が必要で、「正社員の月間有効求人数」を「パートタイムを除く月間有効求職者」数で割って算出していますが、それには派遣労働者や契約社員を希望する者も含まれるため、厳密な意味での''正社員有効求人倍率''より低い値となります。(ややこしいね)

〇ハローワークに登録されてない求人や求職者は含めていないこと

今の世の中だと、ハローワークに登録せずに転職活動している方も多くいらっしゃいますよね。そういう方々の存在を「有効求人倍率」の数字は含んでおりません。企業側の求人数についても同様です。

ただ、そういうハローワーク外で転職活動している方、企業すべてを含んだリアルな「求人倍率」を出そうと思ってもなかなか難しそうですよね。

過去には自社サービスの求人倍率を独自に出していた転職サービスもありましたが、見かけなくなりました。

〇職種・エリア毎によって大きな差があること

各セグメントに分けると、有効求人倍率は大きな差があります。(以下2020年9月分※

例えば「職種」別で見ると、「一般事務の職業」に限定した有効求人倍率は、0.26倍と低くなっております(単純計算だと1つの求人に対し、約4人の求職者がいることになります)。

一方で採用難易度が高いと言われている「介護サービスの職業」は、3.82倍と高くなっております(一人の求職者に対し約4つの求人があることになりますね)。「建設の職業」「土木の職業」はさらに高く、4.04倍、5.71倍となっており、人手不足が深刻な状況となっています。

また、エリア別でみても職種ほどではありませんが差があります。就業地別でみると、最高値は福井県の1.52倍、最低値は沖縄県の0.71倍でした。

3.「有効求人倍率」を活かす観点について

「有効求人倍率」を’’有効に’’活かすためのポイントについて、2つ挙げさせていただきます。

〇景気の判断の材料の一つであること

上記でも述べましたが、有効求人倍率は「景気動向指数」という景気の良し悪しを表す指標の一つの材料になっています(全部で30の材料をもとに毎月内閣府により発表されています)。

また、別の材料の一つとして「新規求人数」というものもあります。その月に新たに登録された有効求人数のことで、こちらも「景気動向指数」を算出する一つの材料です。この値は「先行指標」とも言われ、景気に数か月先行して増減すると言われています。

〇様々な指標との比較の中で意味を持つということ

有効求人倍率は過去のデータや、他のデータ、職種別・エリア別で分類したデータ等との比較の中で意味を持ちます。(すべてのデータ分析に共通する話と言えますが…)

例を一つ挙げます。下記は有効求人倍率の推移です。※

平成21年度(2009年)より10年間連続で上昇していた有効求人倍率が、昨年令和元年度(2019年)から低下し始めています。新型コロナ感染症の感染拡大以前より有効求人倍率は低下していること、有効求人倍率は景気を測る指標の一つであることから、「コロナを機に景気が悪くなり''始めた''」と考えるのは怪しいかもという仮説を持つことができます。

「有効求人倍率」は「生産年齢人口」と比較されて議論されることも多いです(求人が増えているのは景気が良くなったからではなく、定年退職等により働く人が減ったから、という意見等)。このような議論を聞いた時、自分自身で数字を読み解き正しいか正しくないか考えることができるか、がとても重要です。

「有効求人倍率」などの「指標」をそれぞれ正しく理解し、それらを比較して考えてみることが、世の中についてより適切な見方ができるようになると考えています。

4.まとめ

「有効求人倍率」とは、

直近2ヶ月でハローワークで仕事を探している求職者一人に対し、いくつの仕事があるか

を表す指標であること。

注意点は、

・「正社員」以外を含む数字であること・ハローワークに登録されてない求人や求職者は含めていないこと・職種・エリア毎によって大きな差があること

大事な観点は、

「景気」の良し悪しを判断する指標の一つであり、様々な指標との比較で意味を持つということ

というお話でした。


今後、その他の指標についても少しずつまとめさせていただきたいと思います。ご意見やご感想、間違えている点等あればご教示くださいませ。

最後まで読んでいただきありがとうございました!


【参考・引用文献】

※職業別一般職業紹介状況[実数](常用(含パート))(厚生労働省)https://www.mhlw.go.jp/content/11602000/G35-202009.pdf

※一般職業紹介状況(令和2年9月分)について(厚生労働省)https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000212893_00047.html

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?