数学嫌いは「教えるから」かも

数学嫌いになるのは「教えるから」だ、という仮説を持っている。解き方を自分で「発見」すると、とても嬉しくなる。パズルを解けたように。推理があたったように。私はなるべく子ども自身に「発見」してもらうように心掛けている。そっちの方が楽しいから。 https://t.co/3W5IdFQ7YC

大人からしたら、11+3は14、というのは簡単に見える。10はほっといて、一桁の1と4を足せばよいだけだ、とわかるから。しかし「10はほっとけばいい」というのは、子どもからしたらとんでもない話。なぜそうなるのか?容易に納得できる話ではない。

息子は小さな頃、足し算は点を書いていた。11個の点と3個の点を数字の下に描いて、「いち、にい、さん・・・」と、全部数え終わるまで、一つずつ数えていた。地道だなあ、と思ったが、特に何も教えず、好きなようにさせていた。ところがある日。

いきなり14,と答えを出せるように。「どうやったの?」と聞くと、何度計算しても、10はほっといて一桁の位同士だけ足した答えになることに気がついたから、という。何度も何度も点の数を数える地道な作業を繰り返すことで、10の位はほっとけばいい、という法則を「発見」した。

人工知能での深層学習でも、たくさんのデータを学ばせるうち、新しい法則を発見させることができる。人間は、ビッグデータというほとたくさんは要らないけど、やはりある程度の数をこなすと、自分で法則を発見する仕組みが働くらしい。

私は、息子や娘をただひたすら観察し、子どもが何か発見したり工夫したりしたら驚くようにしていた。すると、子どもは数字の不思議を発見しては私に知らせ、驚かそうとするようになった。私は毎度毎度、驚かされることに。「よく自分でそれに気がついたなあ!」

子どもからしたら、数字にまつわる不思議を発見することは、楽しい遊びであるらしい。
もちろん、その発見は、すでに先人が発見済のもの。大人は「知ってる」と反応してしまいがち。特に大人が教えてしまっている場合は、教えたことを忘れてると、むしろ不満顔。それが、恐らく数学嫌いの原因。

私はいつでも驚けるように、教えない。教えなければ、「教えてないのによく自分の力で気づいたなあ!」と驚ける。子どもの発見、工夫、挑戦に驚くことができる状態に自分を置くため、教えないようにしている。

私は、子どもの発見・工夫・挑戦に驚く、反応装置。受動的、受け身な存在。そうなることで、子どもは能動的に数字の不思議を探究し、工夫し、挑戦し、発見する。私はそれに驚く。それを続けてきただけ。子どもが能動的な存在なるには、受け身な存在が必要。

それが親であり、教師なのだと思う。小学校に入るまでに大人たちが幼児に対して向けていた接し方を、ずっと続ければよいのだと思う。すると子どもは学習意欲を失うことはない。新たな発見、工夫、挑戦を繰り返し、大人を驚かす遊びを続けるように思う。

私が研究室で学生を指導する場合も、同じスタイル。学生の工夫、発見、挑戦に驚き、面白がる。すると、学生はますます意欲的に実験に取り組み、新しい発見をしては私を驚かしてくれる。驚き、面白がるに徹する存在が一つあると、人は能動的になるものらしい。

教えようとする人を増やすより、驚く人を増やせばよいのに、と思う。昨日できなかったことが今日できるようになってる。それがいかにささやかな変化であってもそれに気づき、驚く存在が一人いると、人間は能動的存在に変化するもののように思う。

驚く人がいると、楽しくなる。楽しいから粘り強く考え続けることも楽しめる。だから深く理解できるし、応用力もつく。私は、「驚く」ことで意欲というエネルギーが満たされるように気をつけるだけ。

「教える」以上に、「驚く」ことの効用は大きいように思う。意欲がなくては学びは進まない。楽しくなくては続かないし、集中もしない。数学のようにみんなが嫌がる教科でも、遊び化できるのではないか、という仮説に立ち、そのために「驚く」に徹してきた結果。

二人の子どもとも、数字にずいぶん興味があるらしく、小1の娘は小数点の計算をし始め、小4の息子は代数(文字式)の計算やタンジェントの扱い方を「発見」した。教えていないのにどんどんマスターしていく。

推理小説は、最後を読んでしまえば犯人が分かってしまう。それが分かっていても最後から読もうとせずに、最初から順に読み始め、ワクワクドキドキしながら、読者も推理する。算数や数学も同じではなかろうか。先人がすでに見つけてるかもしれないけど、あえて。

自分であーだこーだ工夫し、挑戦し、発見できると、楽しい。自分で見つけた!というのはワクワクする。算数や数学は、推理小説のようなものだと思う。なのにいきなり「犯人はね」と教えたら、興ざめもいいところ。

教えず、驚いてみてはいかがだろう。子どもは親を驚かすのが大好き。ならば、驚く役を続ければよいように思う。

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