有機肥料は化学肥料から相当量生まれ、化学肥料は化石燃料から生まれる

スリランカに関する記事。急激に化学肥料から有機肥料に切り替えようとしても、有機肥料も、元はといえば、化学肥料により作られた植物、そしてそれを食べた家畜由来。化学肥料がなくなれば、有機肥料も減る。化学肥料からの脱却は容易ではない。
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カナダの研究者、バーツラフ・スミルによると、もし化学肥料を一切使わないならば、地球は30~40億人しか養えないだろう、と試算している。世界の人口は現在78億人だから、約半分しか養えない。餓死者を出さずに済ませるには、当面、化学肥料に頼らざるを得ない。

ただし、化学肥料も未来永劫頼れるものでもない。化学肥料の製造には莫大なエネルギーが必要だからだ。化学肥料のうち最も重要なのが窒素肥料。窒素肥料のうちアンモニアの製造たけで、世界のエネルギー消費の1~2%を消費しているという。化学肥料は、安価で莫大なエネルギーがあってこそ製造できる。

しかし「安価で莫大なエネルギー」が、そろそろ尽きそうな気配。石油がとうとう「ピークアウト」(採りたくても量が採れない)した可能性がある。
IEA(国際エネルギー機関)は昨年、「石油など化石エネルギーのために投資する必要はない」とレポートを出した。石油文明バンザイだったあのIEAが!

「安価で莫大なエネルギー」が採れなくなり始めたと同時に、地球温暖化(灼熱化)も進み始めている。化石燃料を燃やすとどうしても二酸化炭素が出る。温暖化の進行を食い止めるには、化石燃料の使用を抑える必要がある。ということは、同時に、化学肥料の製造も難しくなることを意味する。

現在、先進国で食料が満ち溢れ、結果として有機物と無機物だらけ、有機肥料だらけになっているのは、化学肥料のおかげ。化学肥料が製造できなければ、余分に食料を作ることは難しくなり、有機肥料も手に入りづらくなる。化石燃料と化学肥料、化学肥料と有機肥料はつながっている。

化学肥料を、太陽電池など自然エネルギーで製造することは可能。しかし現時点でそうしたプラントは存在しない。また、自然エネルギーがかなり普及している日本でも、自然エネルギーは全エネルギー消費の8%程度。化学肥料製造のためにその1/8〜1/4を融通しなければならない計算。

人類を飢えさせないためには、そう簡単に化学肥料の使用をやめられない。化学肥料の製造のためには、化石燃料の使用も急にはやめられない。産業生態系が自然エネルギーにシフトするにはまだ時間がかかる。もし急ぎすぎると、スリランカの状況がどこでも起きる恐れがある。

化学肥料の使用量を徐々に減らしつつ、それでも必要な量の化学肥料は自然エネルギーで製造し、有機肥料で肥料を賄うシステムに、徐々に、徐々にシフトしていく必要かある。しかし現状では、有機肥料を有効活用するシステムの構築も不十分。産業生態系の組み換えには、時間がかかる。

ちょいと補足。化石燃料、自然エネルギーの他に、原子力と核融合がエネルギー候補として挙げられる。しかしこれらにも過大な期待はかけられない。
原子力の燃料、ウランは資源量が大したことなく、このまま原発が増えると三十年分しかない。
プルトニウムなら半永久的に発電できるとされるが。

プルトニウムで半永久的に発電するには、高速増殖炉という特殊な原子炉が必要。実用化できていない。
核融合は研究レベルでも実用化のメドが立っていない。となると、原子力や核融合に過大な期待はかけられない。現時点で実用化されており、伸びしろがあるのは自然エネルギー。

その自然エネルギーでも、まだ力不足。化石燃料を大事に、細く長く使いながら、自然エネルギーをはじめとするエネルギーをうまく増やしていく、難しい舵取りが必要。

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