リチウム電池は超優秀、だけど

リチウム電池はかなり優秀らしく、電気を貯めてまた電気を出す(充放電)効率が95%にもなるらしい。また、電気で動くモーターは、電気を回転する力に変換する効率が90%を超えることがあるらしく、これも優秀。かたやエンジンは、ガソリンのエネルギーの40%程度しか利用できない。ムダが多い。

電気自動車が次世代の自動車として注目されるのも、こうしたエネルギー効率の高さがあるのだろう。しかし一つ難点がある。リチウム電池は重くてかさばる、ということ。1kgのリチウム電池で貯められるエネルギーは、100-200Wh/kg程度。かたやガソリンは。

なんと、1万2,722Wh/kg。リチウム電池は、ガソリンの2%程度しかエネルギーを貯められない。ガソリンは、リチウム電池の50倍くらいのエネルギーをため込んでいるということ。このため、ガソリン車は一度満タンにすると長距離を走れるけど、電気自動車は難しい。

現在のリチウム電池の能力では、乗用車を走らせるくらいは可能になっても、大型トラックや大型の農業用トラクターなどを動かすには、物足りない。今後、画期的な技術が生まれたらいいけれど、さすがに50倍にまで能力を引き上げる技術はまだ生まれていない。

電気で飛ぶ飛行機を作ろう、という話にならないのも、この電池の重さが原因であるらしい。石油系の燃料なら軽いから飛行機を飛ばしやすい。しかし電気飛行機は、電池が重すぎて飛ばせないらしい。

飛行機の燃料として、最近、食用油に注目が集まっているのは、それが理由らしい。食用油を加工すると、飛行機の燃料(SAF)に変えることができる。石油系の燃料を燃やすより二酸化炭素の排出を抑えることができるとして、最近は食用油が取り合いになっているらしい。

しかし、食用油の量はたかが知れている。今の飛行機を全部飛ばすだけの量の食用油はない。だから一部を食用油などから製造したSAFに置き換えて、少しでも二酸化炭素排出を減らそう、という現実的な選択をしようとしているらしい。飛行機は事実上、「燃料」で飛ばすしかなさそう。

飛行機を飛ばすには、今後も一定量、石油系の燃料が必要。石油をエネルギーとして利用しにくくなった時代が来たとしたら、飛行機での旅行はどうなるのだろう?

石油は、エネルギーとしての価値が急速に低下している様子。昔、石油の利用が始まったばかりの頃は、採掘するのに1のエネルギーを投資したら、200倍のエネルギーの石油がとれた。ところがシェールオイルになると、10倍を切るように。エネルギーとしての黒字幅が急速に小さくなっている。

それに、石油のままでは自動車も飛行機も飛ばせない。ガソリンや軽油に加工する必要がある。ガソリンスタンドなどに運ぶエネルギーもいる。こうしたことから、3倍のエネルギーの石油が採れないと採算合わなくなるんだけど、この3(EROI)という数字に近づきつつある。

石油をエネルギーとして利用できなくなった時、代わりになるエネルギーはあるのか?現状、心もとない。石油は余りにエネルギーとして優秀過ぎた。天然ガスや石炭でも、石油ほどの優秀さはない。特に自動車や飛行機を動かすエネルギーとして超優秀。

石油がエネルギーとして利用できなくなった時、食料生産も危うくなる。今の農業は石油づけになっているから。たとえば日本の農業は、GDPの1%程度しか稼げていないけれど、エネルギー消費は全産業の2.81%。つまり、自動車産業や24時間明るいコンビニなどと比べても、2.81倍もエネルギー食い。

しかも、農業用機械のほとんどが石油系燃料で動くもの。大型農業機械になると、電動化は非常に難しいという話を開発者から聞いている。パワーと持続時間を兼ね備えようとすると、どうしても石油系燃料に勝てない。でも農業ではどちらも必要。

石油系燃料と同じように使えるものとして、バイオエタノールやバイオディーゼルといったバイオ燃料がある。けれど、ブラジルでのサトウキビ由来バイオエタノールを例外として、バイオ燃料は製造するときに必要なエネルギーの方が、得られたエネルギーよりも大きくなってしまう。エネルギー的に赤字。

バイオ燃料で農業機械を動かす、というのもあまり現実的とは言えない。石油がないと、今の農業生産を果たして維持できるのか?大いに疑問。この問題は、日本だけでなく世界でも同様。どうする人類?

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