分数を理解するには「段階」を踏まえることが重要

Facebook友に刺激されシェア。これ、問題の出し方が悪い。2点指摘したい。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00087/022900373/?fbclid=IwAR0foveY7_1LPd0yDW5K7GcxfU-uAIJXfyWtXck1OLj83BUNOjc7Cbujkfw

1/2+1/3の答えは5/6だけど、答えの選択肢にそれがない。で、5を選んだ子が五人中四人いたというのだけど、私はこれ、「正解」でよいと思う。なぜなら、問題文は「数」ではなく「数字」とあるから。

「数」ならば、近いのは(B)1となる。でも、問われてるのは「数字」。ならば、5/6という答えには「5」という数字が含まれているのだから、(D)5が最も近い、と類推するのは最もな話。これは問題の問い方が悪い。答える側は混乱する。

記事は、これら分数で正解を出せなかった子どもたちの珍答ぶりを不思議がる内容になっている。しかしこのときの問い方もまずい。長い紙を「1」とする、という問い方が、已にまずい。なぜ「1本」と単位をつけなかったのか?

単位さえつければ、紙を半分に切ったら1/2本、3分の1にしたら1/3本、と、正解を出しやすくなっただろうし、理解もしやすかっただろう。ところが問いかけた先生は「1」という、非常に抽象的な、理解が困難な表現をした。

数の概念が育ってない子どもからしたら、大きな紙も小さな紙も「1」。先生は「長い紙を1とする」と宣言したつもりだったのだろうけど、数の概念がアヤフヤな子どもからしたら、「1」をそのサイズに固定しなきゃいけない、ということがそもそもわからない。そこの前提を共有できないから、混乱する。

これは逆にいえば、この先生が、子どもはどうやって数の概念を習得していくのか、という発達の点に関して無知なのだと思う。単位のない「1」を理解するには、かなりの積み重ねが必要。単位をつけた計算をしまくってしまくって、その挙げ句に「単位がなくても計算結果は常に同じ」と気がつく。

その結果、単位のない計算を子どもたちはできるようになっていく。しかし、分数を単位なしで理解することは難しい。ホールケーキも1個なら、それを4分割したピースも1個、8分割したピースも1個。「1」は動く。でも「1」が動いてしまうと分数が理解できなくなる。

そこで、ホールケーキを「1個」とする、と、単位を決めて固定すると、1/2個、1/4個、1/8個といったもののサイズ感、実感がつかめる。単位が、「1」のサイズを固定する助けになってくれる。しかし単位がなくなると。

ホールケーキの1個も分割したピースの1個も、みんな「1」に思えてしまう。「1」をどれに固定したらよいのかがわかりにくくなってしまう。分数を理解するうえで、「1」を固定しなきゃいけない、ということが理解できていないことが、分数を理解しにくくしている一因となっている。

だから分数で混乱している子を指導する際は、単位を明確に示すことで、「1」を固定して理解する必要を感じやすくする必要がある。単位をなくすと、「1」が漂流しやすくなる。こうした「理解する順番」を、教える側がきちんと把握しておく必要がある。

記事を見ると、子どもがどうやって数の概念を獲得していくのか、分数を理解するのに「1」を固定する必要があることを、どうやって子どもに納得してもらうか、そのためには単位が有効であることを指導者が知っているか、などの知見が指導者に欠けているように思える。記者が悪いのかもだけど。

分数は、ケーキを切ったり食事を分け合ったりする経験が乏しいと、理解することが非常に難しい概念。一匹のサンマを5人で分けたり、ケーキを8人で分けたり、ピザを6人で分けたりした経験がないと難しい。しかも。

単位に対するセンスを、大人の側が持っている必要がある。たとえばピザ丸ごとを「1枚」とし、8つに分けたのは「1ピース」と呼び分けたうえで、「1ピースは何分の何枚でしょう?」と、単位を明確にして問いかけると、子どもは混乱しにくくなる。「1」を丸ごと一枚に固定して理解できる。

分数を教えることは、分数が理解できている人なら誰でもできるわけではない。子どもが分数を理解するためにどんな概念が育っていなければならないのか、それが育つにはどんな問いかけをすると有効なのか、それらを指導者が弁えておく必要がある。

この記事は、問いを出す側にいろいろまずい点がある。それは記事を書いた記者がわかっていないからかもしれないが、でもやはり、「数」と問うべきを「数字」としたりしてる点から考えると、指導者の側が、きちんと整理して理解できていないように思う。数についても、指導法についても。

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