科学は石油の使い方が上手くなっただけ

人類はエネルギーの消耗なしに石油(のようなもの)を作る技術を持たない。
科学が高度に進歩しているかに見えて、実は石油を燃やし、消耗する技術は持っていても、石油エネルギーを作り出すことができない、という決定的な問題がある。

石油がわずかな量で大量のエネルギーを貯めることができるのは、炭素と炭素のつながり(共有結合)がたくさんあるから。これを燃やすと、大量のエネルギーを放出できる。炭素同士のつながりはエネルギーをたっぷり蓄えた燃料としてとても優れたものになる。

しかし、人類は炭素同士のつながりを上手に作れない。作ろうとするとエネルギーを消耗しなければならない。しかしエネルギーとして石油を作りたいのなら、エネルギーを消耗しては本末転倒。だからエネルギーの消耗なしに炭素同士のつながりを作り、石油を作れたら最高だが、そんな技術はまだない。

石油などのエネルギーの消耗なしに炭素同士のつながりを作ることができるのは、今のところ植物のみ。植物は太陽光エネルギーを炭素同士のつながりという形でエネルギーを貯蔵する能力を持つ。人類はまだ植物のマネができない。

人工光合成の研究が盛んに行われているが、炭素同士のつながりを作ることは難しい。人工光合成が作るのはギ酸というのが多いけど、これには炭素同士のつながりが含まれていない。植物がデンプンやポリフェノールといった炭素同士のつながりをたくさん作れるのと比較すると、まだまだ非力。

人類は結局、石油や石炭、天然ガスといった化石燃料という、燃えることでマイルドに熱を出してくれる、それでいて高カロリーなエネルギーを使う技術が上手くなっただけで、科学は思いの外、エネルギーに関しては進んでいなかった、というのが実態だったのだろう。

1キロカロリーのコメを作るのに2.6キロカロリーの化石燃料を燃やさねばならない。そんな食糧生産を人類は続けている。しかしこんなやり方は続けられない。どうやら石油は採れなくなり始めているらしい。サウジアラビアが必死になって自然エネルギーの開発を進めているのはそのためだろう。

石油は作れない。ただ消耗するしか能がない。人類の技術は、科学は、その程度のものでしかないという事実を受けとめる必要がある。
また、原子力や核融合というエネルギーも人類は使いこなせるとは言い難い。核廃棄物の処分もままならない。それに、基本、電気しか作れない。

電気エネルギーは貯めるのが難しい。電気を貯める充電池は重くてかさばる割にエネルギーを貯められるのがわずか。このため、電気で旅客機を飛ばすことは非常に難しい。石油がなくなると、飛行機という運輸手段は非常に厳しくなる恐れがある。

人類は石油の燃やし方が上手くなったことで現代文明を築いた。石油は大量のエネルギーをもたらした。しかし人類は石油の燃やし方が上手くなっただけだった。その現実が、これから人類を襲う。しかも食料生産さえも石油など化石燃料に大きく依存している。人類はこの難局を克服できるだろうか。

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