徒然なる長話派、理路整然と簡潔派、口下手派

ウェブ飲み会に参加すると、話の長い人がいる。話の切れ目がなく、いつになったら話が終わるのか見えづらい。というか、実際、終わらない。ウェブ飲み会は参加者が複数だからある程度話したら次に回すのがエチケットだけれど、それがない。そうした人を観察していると、共通点があって面白い。
1.話す内容を決めていない
コンパクトに話す人は、話す前から内容を決めている。それも、できるだけ多くの人に話すチャンスが生まれるよう、意識してコンパクトに話している。複数の内容を話すとどうしても長くなるから、1点に絞って話す。が、話の長い人は内容決めてない。
何かそれについては言いたいことがある、気がしただけで手を挙げてしまう。そして徒然なるままに、心にうつりゆくよしなしごとを(徒然草そのままに)、思いつくまましゃべる。これを話そう、という内容を決めていないから、コンパクトに話のしようがない。しかも。
これを話すならあれも話しておかなきゃ、と、徒然なるままに話したいことを芋づる式に増やすので、話が止まらない。とりとめがない。そして不思議なことに、話の腰を折られないよう、まだ話している途中だよサインの言葉を使うのはなぜかうまいので、途中で話を切りにくい。
たとえば「要するに」という言葉。お、ようやく本題に入るか、話に終わりが見えてきたな、と思ったら、また徒然なるままに話がダラダラ続く。そしてまた「要するに」が出てきて話にキリがつくか、と期待させておいて裏切る。こうして、長々と思いつき話に付き合わされる。
2.相手の顔を見ていない
話の長い人は、自分が話している間、参加者の顔を見ていない。自分の話したいことを思い出すためか、上を向いたりよそを向いたりして、画面を見ない。画面さえ見れば、「話が長え」という顔をしている人が増えてきたことに気がつくだろうに、画面見ないから気づかない。
3.高齢者、社会的地位の高かった人に多い
高齢者は、人が話しているときは話の腰を折らない、というのが礼儀であると教えられてきた世代。だから、話し出すと腰を折られることはないと高をくくってずっと話す傾向がある。しかも社会的地位の高かった人は腰を折られた経験がないからか、余計に。
若い人は「自分ごときがあまり長々話してはいけない」という遠慮があるからか、話は短め。話す内容も1点に絞り、他に話したいことがあっても遠慮しがち。結果的に、多くの人が発言できる。また、若い世代は、なるべく発言の機会をみなに回すのが礼儀、と考えているので、意識的に短めに話す。
ご高齢の方は、興に乗りさえすれば時間なんか気にせず何時間でも、というスタイルに慣れているからか、決められた時間内にできるだけ多くの人が発言できるように、という「新しい礼儀」に気がついていない。また、高齢者にそれをアドバイスする人も少ないので、余計に気づきにくい。
また、高齢者でなくても、場慣れしている人は、若い人でも長話になることがある。でも長話はやはり、徒然なるままに心にうつり行くよしなしごと、なので、どうも要領を得ない。話す内容を決めてから話す、という習慣が身についていないらしい。
以上が、ウェブ飲み会で話の長い人を観察していて気がついたこと。
逆に、コンパクトに話す人は、話す内容を決めているだけでなく、その内容をどう説明すればわかりやすいかまで考え、おおよそ話す段取りも決めたうえで話しているから、実に理路整然。だいたい、20秒以内で話が完結する。
「徒然なる長話」派と、「理路整然と簡潔」派があるとすれば、ウェブ飲み会には、もう一つ、重要な存在がある。「話下手」派。この人たちはうまく言葉が紡げないため、話は長くなりがちなのは「徒然なる長話」派と表面上は似ているのだけれど、違う存在感を示す。
自分が確かに感じていることを、どう言葉に紡いだらよいのかわからなくてもどかしい、という様子で、なんとかかんとか伝えよう、という時は、言葉巧みな「徒然なる長話」派とも「理路整然と簡潔」派とも違う味わいがあり、ハッとさせる話が出ることが多い。
「徒然なる長話」派も「理路整然と簡潔」派も、言葉巧みという意味では共通。そして、残念ながら言葉巧みなだけに、言葉が滑りがち。言葉が表面的な使われ方になりがち。しかし「話下手」派は、それをどう言葉にしたらよいか分からないけれど、確かにそこにあるもの、を表現しようとして、面白い。
確かにそれはあるんだけれど、それをどう言葉にしたらよいだろう?言葉をいったんは捨てて考えるその瞬間が訪れるので、私は大好き。「話下手」派は話が長くなると言っても、遠慮がちだから「徒然なる長話」派ほど長くなることはない。それでいて、新しいテーマを提供してもらえたり。
私はツイッターは恐ろしく長い。まさに「徒然なるままに心にうつり行くよしなしごとを」書きまくっているので、長い。ただ、ウェブ飲み会では近頃、20秒でコンパクトに話すことを心がけている。自分が話したら、少なくとも2,3人はしゃべってもらうということも意識している。
まだ話していない人がいたら、話を振ってみる。ウェブ飲み会では、参加者全員の話を、なるべく均等に聞くのが大切。そうしたコツを弁えていれば、ウェブ飲み会も、新型コロナの中で見つけた新たな楽しみとして位置付けられると思う。

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