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何度だってやり直していい

2022年の冬、私は編み物を始めた。あっという間に、その虜になり、季節を問わずに楽しむようになった。

編み物の魅力は、無心な自分になれること。はじめは全身に力が入って肩こりになるし、手首や指は腱鞘炎になりそうに。それでも練習すると、力も抜けてくる。そして、リズムを刻むように一定の速度で編めるようになる。手指に集中して編む時間は、自動的に他のことを何も考えない状態になっていく。
私は思考をストップすることが苦手だ。それに私の夢はいつも賑やかで、寝ている間も大忙し。何も考えない状態をつくるのは、なかなか難しいこと。だから、思考を停止せざる得ない編み物の時間は貴重な時間となった。

さらに、編み物は、普段忘れがちな大切なことを思い出させてくれた。

編み物には、ひとめ一目編み進める方法しかない。効率的なショートカットコースは用意されていないのだ。それに、どれだけスピードアップしようとしたって、完成までの時間はそれなりに掛かる。
それでも、着実に進めば、必ずゴールに到達することができる。スピードに目を向けがちな昨今に、そんな選択肢も良いよね、と言われたようだ。

洋裁では間違えて生地を切ってしまうと、後戻りできないことがある。DIYでも、手順を間違えれば、材料をダメにしてしまうことがある。
一方、編み物は間違えたところまで、糸を解いてやり直すことが出来る。ちょっと前の状態に戻ることも出来るし、全てやり直すことも可能だ。もちろん、一度編んだ毛糸はほどいても、モジャモジャの状態で元通りには戻らない。それでも丁寧にスチームをかけて、玉状に巻き直せば、問題なく、また使用できる。スタート地点に何度だって立つことが出来るのだ。
それに、さっきとは異なるものを編んだっていい。

物事を進める際、途中で辞めてはいけない。引き返してはいけなない。最短ルートを進むべきだ。そんな風に思い込んでいる。と言うより、そんなこと当たり前すぎて、普段は疑うことさえしない。でも、本当にそうだっけ、と落ち着いて立ち止まってみる。そんなことを思い出させてくれる編み物に出会えて、私は幸せ者だ。

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