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大企業のメソッド 《客観性と数字》 で中小企業の経営を科学する⑤ ~作業の「改善」を数値で把握する~

従業員の忙しさを数値で見える化したら、「改善」がマネジメントしやすくなる。前回の記事で書いた通り、従業員の忙しさを数値で見える化することで、会社がどれだけの注文をこなせるかがわかり、今持っている力を最大限引き出すことはできるようになる。しかし、同じ事を同じだけやっていてはどんどん相対的な価値は下がっていく(コモディティ化)。

残念ながら、企業というものは常に発展をしなければ生き残っていけない。今日と同じ明日は来ないのだ。もし、あなたの会社が明日も明後日も一年後も五年後も何も改善を行わないのであれば、確実に競争力も失う。なぜなら、競合他社は確実に改善を積み重ね、競争力を日々増しているからだ。

企業の付加価値を生み出すのは人が作業している時間

従業員ひとりひとりがひとつひとつの作業をどれだけ時間をかけて行うかの総量が企業のキャパシティ(生産能力)である。従業員ひとりひとりがどれかひとつでも作業を改善し、品質を保ったまま作業時間を短縮できれば、空いた時間に別の仕事をできるようになり、企業のキャパシティは増え、付加価値も増え、競争力が上がる。

作業の改善は、大企業でも「小集団活動」「カイゼン活動」「VA提案」など、制度として力を入れている会社が多い。どの大企業も現場から上がる改善の提案こそ競争力強化の源泉だと分かっているから力を入れるわけだ。

作業時間の分析

だが少ない人数で作業を行わなければならず、日々の仕事に追われる中小企業にとって、現場から改善提案がどんどん涌き出てくるというのは理想論だろう。なので経営者が共に協力して、各従業員の作業の改善をしていくしかない。そのためにまず必要になるのが作業時間の細かい分析だ。

筆者の経営する会社では、作業時間チェックシートの提出というルールがある。まずは各従業員が行っている自分の作業をなるべく細かく工程に分ける。そして作業にかかった時間を工程別に記録していくのである。

こうすることで出来上がった作業時間チェックシートを、従業員とともに眺める。すると最も時間がかかっている工程が分かる。すなわち、この工程がまず何とかしないといけない工程というわけである。この工程を短くするために何かアイデアはないか?と聞く。すると意外に具体的な提案を受けることもある。もちろんこちらからこれはどうだ?あれはどうだ?と聞く事もある。要は、具体的に工程までばらして、状況を理解し、イメージを共有できれば、従業員も頭を捻ってくれるし、こちらの意見も取り入れようとしてくれるということである。

改善をベンチマーク

何かしらの工夫によって作業を改善したら、その後、作業時間がどれだけ変わったかの確認のために再度作業時間チェックシートを提出してもらい、改善の時間的な価値を数値化する。すると「改善」は会社の資産となり、他の従業員ともその資産を共有することができるようになる。

作業時間チェックシートの意義は、①従業員の作業改善のきっかけ   ②改善の数値化と改善の記録   ③より正確な作業時間の把握   と考えている。忙しさの見える化を行えば今のキャパシティが見える。作業改善を行えばそのキャパシティがどれだけ増えたのかが分かる。会社も従業員も成長することができる「改善」を少しだけ科学してみてはいかがだろうか。


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