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JazzBassの2V1T回路とSSJBコントロールについて

世の中のスタンダードなエレキベースのフォーマットとして、FenderのJazzBassがあります。

いわゆる普通のジャズベ

このJazzBass(以下ジャズベ)を模したレプリカやそれをオマージュしたものがエレキベース市場の大半を占める訳ですが、今回はいわゆるごく普通のジャズベのパッシブ・コントロールにちょっと難があるよっていう話と、その改善案の話です。

Fender Jazz Bassのオリジナル配線と問題点


Fenderオリジナルのコントロールおよび配線はこのようになっています。

POTは250kAであることが多い

各ピックアップの音量を調節する250kAボリュームが2個。コンデンサによるLPFを掛けるトーン用の250kAボリュームが1個。合計3つのボリューム(POT)で操作する2ボリューム1トーン(2V1T)というコントロールが標準です。

※最初期のジャズベースは2V2Tだったりしますが一般的ではないので今回は割愛。

この例に倣い、一般的に2つのピックアップをもつパッシブ・サーキットの楽器の多くは、この2V1T配線が採用されています。ただ、このジャズベース方式の配線だと、電気的にとある問題が発生します。……わかりますか?

そう、2つのピックアップ・ボリュームをゼロにした時、出力がGNDに落ちないんです。

この2V1T配線は各ピックアップを個別に音量操作し、なおかつ片側のピックアップがオフになった時にもう片方のピックアップの音量がゼロにならない=GNDに落ちるのを防ぐため、ボリュームの入力端子と出力端子を逆に使っている。

つまり、2つのボリュームを絞った時にGNDに落ちるのはピックアップ側。出力側はオープンに近い状態となり、アンプ側からみるとケーブルを介して高インピーダンスのノイズ源になる。これが原因で、楽器本体のボリュームをゼロにすると、アンプからジーというハムノイズが乗ってしまうことがしばしばある。

演奏の合間に一旦音を止めたい時、ノイズが出て困った人も少なくはないはず。

このような2V1T回路特有の問題ですが、これに少し手を加えると問題を解消しつつ、使い勝手がだいぶ改善するよっていうのが次の自分のアイデアです。

SSJBコントロール概要

そんな2V1T回路を改善したのが次のような回路です。
CADで書いたから実線図じゃなくてすいません。

SSJBコントロール概要

このように、オリジナルの回路にon-off-onトグルスイッチを追加します。
自分が考案し、SSJBコントロールと名付けました。
(Shin Sheena's JBの略)

スイッチが上を向いている時(片側がonのとき)は、ミュートスイッチになります。このミュートは出力がGNDに直接落ちているので、オープン状態のようにノイズは乗りません。2ヴォリュームでミュートするには2つのボリュームを回して0にしなければいけませんが、これなら一瞬でミュートもできます。

スイッチがフラットの時は通常の出力で、何も変化はありません。

スイッチが下側を向いている時は、プリセット・トーンがonになります。予め決めておいたトーン定数(R1*C2)でLPFが掛かり、いつでも決まった好みのハイカット・サウンドが再現できます。リアP.Uと組み合わせる時などに便利です。

このSSJBコントロールの最大の特徴は、オリジナルの2V1Tの基本配線はそのままに、大幅に操作性が上がっていることです。

また、追加したトグルスイッチには信号は直接通過しないので、金属接点による音質の劣化もありません。これもメリットです。

実用例

このSSJBコントロールを採用しているのがメイン楽器のTiny Flower5です。

2v1T+スイッチ構成

コントロールは古典的な2V1Tになっています。ボディにはアクティブサーキット用の大きいキャビティがありますが、プリアンプは入っておらず完全なパッシブサーキットの状態です。これにトグルスイッチを足したSSJBコントロールになっています。

自分はちょっとした演奏ではほぼエフェクター等は使わないでアンプ直で演奏することが殆どなので、さっとミュートできるので重宝しています。あとセッションのソロなどでちょっとだけハイカットしたい時に瞬時に音色を切り替えられるのも都合がいいです。

ちなみに既成の楽器に取り入れる時はちょっと工夫が居ると思います。

Fenderのようにコントロールプレートにボリュームが配線されているタイプだとコントロールプレート自体に加工が必要です。

なので、既成の楽器に取り入れるのはちょっとハードルが高いかも知れないですが……コントロールパネルがない楽器や、新しく楽器を製作する時にはおすすめします。

ついでに補足

そうそう、単にミュートスイッチ付けたいだけなら別にon-offの2Pスイッチでもまったく問題ない。出力の線を引っ張ってGNDに落とす配線にすればいいだけ。

あとここまで読んで「いや一瞬でミュートしたいならバランサー配線にすればよくね?アホか??」と思った人が一定数居ると思います。

実は、バランサーの回路はちょっとした問題がある。

世間や学校で教えてくれなさそうだから、無識なべースッパリには特別に説明しよう。

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