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乳製品加工の奥深さを解説

昨日記事にも投稿しましたが森林ノ牧場では乳製品加工の仲間を募集しています。

良い仲間が来るといいなと思います。
森林ノ牧場は「放牧スタイルの牧場」として注目されることは多いのですが、「6次産業化」の「加工」の部分に注目してもらえることが少なく寂しいところなのです。

僕は今ほとんど現場に入っていないですが、
社長になる前や社長になってからしばらく、
牧場よりも乳加工現場にいる時間の方が長く、
個人的感情でも乳加工が好きなのです。

乳製品加工は奥深いもの


青々と生えている草を牛が食べることでミルクが生まれるわけですが、
簡単に言えばミルクを加工することが乳加工のお仕事で、
乳加工の目的は大きく二つあると思っています。

乳加工とはミルクを美味しくする技術

一つ目は、ミルクを「いかに美味しく」するかということす。

牛乳のまま飲んでもいいし
アイスにしたり
バターにしたり
チーズにしたり
ヨーグルトにしたり
原料の特徴を生かした乳製品に加工していきます。
美味しくするために発酵時間や使う乳酸菌を工夫したり
アイスのレシピやヨーグルトの砂糖の量や種類などを考えるわけです。

原料のミルクの美味しさ

ただ、原料のミルクが美味しくないと
いくら良いレシピがあっても美味しい乳製品にはならないのも難しいところです。

ミルクの美味しさの基準としてよく知られているのは
乳脂肪とか乳タンパクとかの「乳成分」
一般的に濃いミルクほど美味しいとされていて
ジャージー牛は濃いミルクを出すから美味しい、と言われるわけです。

体細胞

では濃いミルクなら美味しいのかというとそうでもない。
病気をしている牛が免疫が下がっていたり搾乳衛生がよくない状態の場合
「乳房炎」という病気にかかりその牛のミルクはいくら濃くても不味いのです。
乳房炎かどうかはミルクの「体細胞」の数値を見ることで判断できます。
体細胞が低ければ低いほどに塩味や苦味やえぐみなどがなく、美味しいとされています。

衛生管理

成分が濃くて体細胞が低くても
衛生管理が悪くて汚れたミルクは時間と共に極端に不味くなります。
いろんな菌が繁殖することで香りや雑味が生まれるのです。
極端な話腐ったミルクをどんなに加工しても美味しくなるわけがないのです。

他の要因

春になって放牧が始まり牛のエサが変化をするタイミングや
夏場炎天下で牛が体力を消耗している時
ハーブなど香りのついている草を食べた時
給餌している餌が腐敗していたり酪酸発酵していたり
ミルクをまずくする要因は他にもたくさんあって、
日々味覚や数値でモニタリングしながら何か違和感や変化があれば、
製造現場を観察し、生産現場とコミュニケーションしながら要員を潰していきます。

美味しい原料乳を維持する技術があって、その上に美味しいレシピや職人の技術が乗っかり、美味しい乳製品が生まれます。

乳加工とは保存の技術

乳加工の二つ目の目的は「保存」です。
牛から搾ったミルクは水分が多く栄養も高いので
「腐りやすく」「重い」ために
「すぐに」「その場で消費」しないといけないのです。

それを殺菌、発酵、脱水、冷凍などの技術で「保存」することが乳加工の重要な役割なのです。
殺菌することであちこち流通できる牛乳になり
発酵することで常温でもヨーグルトは飲めて、チーズが1年後まで食べられるようになり
遠心分離や脱水することでバターになり
冷凍技術ができたことで北海道のアイスが日本全国で食べられ
粉末化することで余った牛乳は脱脂粉乳として長期保管や輸出もできます。

時代、気候、地域、文化、需要など、色んなバックグランドがあることで、
世界中に多様な保存技術が生まれてそれが乳製品のバリエーションになりました。
しかも保存することで美味しくなり価値が高まる、という面白さ。

生えている青草が牛を通していミルクになり、
乳加工をすることでそれが全国の方に、
しかも今だけではなく未来の人たちにも食べていただけるというのはワクワクしませんか?

乳製品、本当に奥深いものです。

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