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「相談に行って発達障害って言われたらどうしよう…」と思われている保護者の方へ

幼稚園や保育園、こども園に通っているわが子が、先生から「クラスで見ていて気になる」と言われた時。
参観に行って「なんか他の子と違う…」と感じた時。

親としては、たいへん心が痛む瞬間です。

「性格じゃないの?」
「もしかして、発達障害?」←最近はこのように思われる方が多くなりました。
「自分の育て方が悪いんだろうか」
「家ではちゃんとできるのに…(なぜ園ではできないんだろう)」
「早生まれだから(男の子だから)(女の子だから)(ひとりっ子だから)?」

などと考えたり悩んだり、身近な人に相談したり、ネットで調べたりはするものの「きちんとしたところに相談に行ってみよう」と思われる保護者は少ないように思います。

相談に行って、もし「発達障害と言われたら、診断されたら…」なんてことを考えたら・・・私が保護者でも相談に行くのをためらいます。

ですが!
病院以外の機関で「診断」されたり「障害名」を告げられるなんていうことはありません!

今回は
・「相談に行って診断されたらどうしようの誤解」について、また
相談に行く時のコツを、
 ① 診断名とか言われたくない。
 ② もし発達障害の可能性やその傾向がある場合、きちんと対応したいから言ってほしい。
の2バージョンに分けて書きたいと思います。

◇ 「相談に行って診断されたらどうしよう」の誤解

前回の記事で、「保健所や自治体の『子育て相談』の限界とは?」について書いたのですが、保健所や自治体にいる「相談員」というのは、子どもの発達に詳しい臨床心理士(2019年からは公認心理師も)の他、臨床発達心理士さん、子どもの発達に詳しい言語聴覚士さん、保健師さんや地域によっては保育士さんなどが担当されているところもあるかもしれません。いずれも子どもの発達を良く知っている「専門家」には違いありませんが、「お医者さん」ではありません。

ここが一番のポイントです。

「診断」というのは、お医者さんにしかできません
医師以外の人が「診断」をすると違法行為になってしまいます。
ですから、保健所や自治体の「子育て相談」に行ったからといって「発達障害と診断される」なんていうことはありません。
これは、私のような臨床心理士が営む相談室も、幼稚園にいるキンダーカウンセラー、保育園に来る巡回相談員についても同じです。

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こういったことは、保護者の方だけでなく、幼稚園、保育園の先生でも誤解されている方のほうが多いのが現状です。私達、相談員がもし、必要に応じて保護者や先生方に何らかの障害名を伝えることがあっても、それは「診断」ではなく、あくまでも「見立て(アセスメント)」ということになります。

ところが、ごく、たまーーーーーに

” 本島南部の母親は数年前、小学校高学年だった息子のことで学校側のカウンセラーと面談した。以前より乱暴になっている言動について相談するつもりだったが、カウンセラーが話すのは「アインシュタインだって、発達障がいだったんですから」ということばかり。息子に会いもしないうちから障がいだと決め付けられているようで、面食らったという。”

というようなこともあるようです。

上は、ある新聞記事(沖縄タイムス)からの引用ですが、このお母さんは、

「会ったこともないスクールカウンセラー」から、「発達障害」という言葉を用いてお子さんの「見立て」を伝えられた

ことになります。
本来あってはならないことですが、そんなことを言われたお母さんは、たまったものではなかったでしょう…。
(なぜこのようなことが起きたのかについては、こちらのnoteで考察しています。)

ですが一方で、保護者の方から
「健診の時、勇気を出して心理士さんに相談したのに、奥歯にものが挟まったような言いかたをされ、はっきり言ってくれなかった
という声を聞くことがあるのも事実です。

それは「医師以外の専門家が『診断』することはできない」といった事情があるからに他ならないのですが、保護者の中には「あの時、はっきり言ってもらえてたら、もっと早くから対応したのに、できたのに」という気持ちを持たれる方もいらっしゃるので、難しいところです。

というわけで、お子さんについて気になることを「子どもの発達の専門家」に相談しても診断されたり障害名を告げられることはありません。
一人で悩まずに、どうか気軽に身近にある「子育て支援」「発達支援」の機関や、保健所や市町村役場の「子育て相談」を利用してください。
自治体のこういった相談は、無料です。


以上を踏まえての

◇ 相談に行くときのコツ

になりますが、

「診断」なんてしてほしくない。
たとえ「見立て」であっても、聞く勇気がない。

という親御さんは、最初に相談員にそのように伝えられると良いと思います。「発達障害かどうかを知りたいのではなくて、この子をどんな風に育ててやればいいかを知りたい」と、子どもについて悩まれていることへの対応方法を尋ねる姿勢で、相談をされるといいと思います。

反対に、

「発達障害かどうか知りたい」
「何か生き辛さを抱えているなら、少しでも早く対応してあげたい」

と思われる親御さんは、「こういった相談室で診断されることがないのは知っていますが、相談員さんはどう思われますか?発達障害があるとしたら、何だと思われますか?この子の特徴を理解した上で、育てていきたいので」というような尋ね方をされると、相談員も答えやすいと思います。

無料で子育て相談ができる、身近な地域の相談室。
上手に活用してください😊

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