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言語の生物学的基盤:モバイルニューロン

 僕が試行錯誤を経て自力で打ち立てた「言語は脳室内免疫細胞ネットワークで処理される」という理論は、まだ仮説であるが、かなり信ぴょう性がある。2012年9月に法政大学で開かれた第11回情報技術フォーラム(FIT2012)で発表して以来、日本国内の様々な研究会や学会、世界各地で開かれた査読付き国際学会で10年以上にわたって発表しつづけてきたが、まだ誰からも誤りや反証を示されたことがない。

 免疫細胞ネットワークは、言葉の記憶を司る「Bリンパ球(脳脊髄液中を浮遊)」、耳から脳室に言葉刺激の入力を伝える「脳脊髄液接触ニューロン」、五官の記憶に言葉のインデックスをつけて大脳皮質に着床する「マイクログリア」の3種の細胞によって構成される。

 

ネットワークを構成するのはB細胞、脳脊髄液接触ニューロン、マイクログリアの3種の細胞。それぞれの細胞の抗原と抗体がお互いに認識し、認識される関係を構築する。

Bリンパ球はモバイルニューロンである

  免疫細胞が言語処理するというと、「アリエナイ」という反応を示されたことが何度かある。しかし、その人たちは、カンブリア大爆発の後、免疫細胞と神経細胞が同じ能力をもって同時に生まれたことを知らない。違いは2つしかない。神経細胞はシナプス接続するが、免疫細胞はシナプス接続なしに、抗原分子と抗体分子がモバイルネットワークする。そして、免疫細胞の数は神経細胞の100倍もある。この2点が違うだけで、あとは同じ能力をもっている。
 

 Bリンパ球は、言葉の音韻刺激に対する抗体分子を細胞膜上に形成する。Bリンパ球の細胞膜上の抗体は、脳室壁にある脳脊髄液接触ニューロンの抗原や大脳皮質のマイクログリア細胞膜上の抗原と「特異的に」(鍵と鍵穴のようにピタリと)結合し、ネットワーク記憶を蓄積する。Bリンパ球は、メモリーB細胞とも呼ばれる。Bリンパ球に蓄積された記憶が言葉の意味となり、意識を形成する。

 もし免疫細胞ネットワークが、意識を形成するのだとすれば、我々は何かを学ぶときは、丁寧に文献を読み解き、繰り返しあれこれと考え、細胞に十分な知的刺激を与えることで、記憶を確固たるものにできるということだ。

脳外科手術で失語症が生まれる

 脳室内の水圧が上がる水頭症の患者に、シャント術を施して、脳脊髄液を腹腔に流すことで水圧を下げる治療が行われている。その術後の患者に失語症・失読症が発症しているそうだ。脳脊髄液中のBリンパ球が意識を形成するため、大脳皮質に病変がなくても、脳脊髄液を喪失するだけで失語症になってしまうのだ。いわゆる超皮質性失語である。
 一方、昨今のように内視鏡手術によって、脳脊髄液の流出がおきないと、失語症も生まれにくくなると思われる。脳室という循環系は、脈絡叢やくも膜顆粒が血液脳関門を形成して、脳脊髄液を安全に隔離し保護している。むやみにシャント術などしてはいけないのではないだろうか。

 



トップ画像は、耳から脳室壁、脳脊髄液中、大脳皮質上の免疫細胞ネットワークが言語処理する概念図。( (c) Tokumaru Kumon 2023)

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