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長文感想『バッタを倒すぜ アフリカで』前野 ウルド 浩太郎

この本は、2017年に出版されたベストセラー『バッタを倒しにアフリカへ』で掲載できなかった研究内容と、前作を上回る抱腹絶倒エピソードをてんこ盛りにした決定版であります。

研究開始当初から、「バッタに会えない」「日本の研究支援機関とのやり取りで何度も帰国、その度にお足も出るし研究機会も支障発生」、そして前作の『バッタを倒しにアフリカへ』のヒットがさらなるとんでもない事態に😭

常人ならこころ折れそうな事態でも、砂漠に雄々しく立つ研究者としての信念が爆発する渾身の著作なのです!


ウルド博士が大発生するバッタを求め、思い付きで飛び込んだアフリカ・モーリタニア。
前作でも感じましたが、著者が様々な場所で出会う「人の運」は抜群のものがありました。

「ウルド」の名の送り主、モーリタニアバッタ防除センターのババ所長(当時)。
そして、バッタに会えない間に食いつないだ「ゴミムシダマシ」のリポートをきっかけに知り合った、今作で初登場のアメリカ南部の研究者・ダグ。

足りなかったフィールドワークの経験を補うべく、ダグのフィールドでのイナゴの産卵の研究を見学へ(もちろん自腹😓)。

目的に向かって手を携えてくれる「仲間」とも徐々に巡り合い、本格的な「戦士」として脱皮する様子はまさしく憧れのバッタそのもの?😅

そんな多くの方々の期待を背負つつ次第に胆力を身に着けていく様子は、読み手のこころを引き付けて止みません!


そんなリアル「異世界転生物語」なのですが、コロナ禍で思うように動けない時期もあったものの、ようやく形を成しつつあった研究。

しかし「現実世界の論文」として完成させるのは、素人が思うより大変高いハードルが待ち構えていたのです。

そもそも、研究者に必要な語学力やフィールドワーク技術も未完成なまま現地へ飛んでしまったほどですし、それを発信するための「論文」を仕上げるノウハウもまだまだ…。

どんな研究雑誌に論文を投稿し、採用されるか?
いかに百戦錬磨の編集スタッフを納得させる内容を完成させるか?

ここでも10年以上も、砂漠で、研究室で、研鑽を積む間に著者の「人の運」が徐々に花開くことに。

今回は、前作で触れられなかったアカデミックな内容もあり途中に小難しい話もありますが、ウルド博士の「異世界転生物語」はそれを補って余りあるドラマが詰まっているのです。

【以下、余談】(いや、メインかも😏)


前作でも著者以上に注目を集めた? モーリタニアの頼れる「砂漠のライオン」、ドライバーのティジャニ。

1章まるまる、彼のトンデモエピソードが紹介されてます。

ウルド博士にとって、移動のみならずプライベートも彼無くして暮らせないほどの相棒。

ティジャニも収入のほぼすべてをウルド博士におんぶにだっこなので、ほんとにいいコンビなのです。
(収入アップを目論む話は爆笑必至?🤣)

日本でのサイン会では「私、ティジャニのファンなんです!」という女性が現れて、自分に順番が回らない不条理を嘆くウルド博士(笑)。

そんなウルド博士が最後の最後に説く「読書の効用」は、進路に悩む若い方への熱いメッセージが感じられて、私もグッときましたよ(T_T)
(おわり)


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