見出し画像

白い家

第1章 真白の箱 (6)

’故郷は遠きにありて思うもの
そして悲しくうたふもの
よしや
うらぶられて異土の乞食になるとても
帰るところであるまじや’

私はいつも母から手紙が来る度、室生犀星の小説の一遍を想う。

私の故郷は、田舎であった。
田畑の中に、無人駅が一つ、汽車は1時間に1本、コンビニなどない。
若者たちは夢を追い、多くは都会に旅立つ。
残された老人たちは村を守ろうとするも、伝統行事や神事の後継者なく、
廃れていくばかりの過疎地域であった。


時代は過ぎていくのに、いつまでも進化のない、その落ちぶれた故郷が、私は大嫌いだった。

私は故郷を捨てた。もはや、東京では流浪の民となり、時代に乗り遅れまいと必死にもがいている。





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?