連載小説「クラリセージの調べ」2-3
母屋の庭には、お義父さんが孫のために作った2メートル四方の砂場がある。子供用の小さなシャベル、スコップ、バケツが揃い、皇太郎くんは砂団子づくりに熱中している。できた砂団子は、砂場の縁の木枠に並べられている。
頬に夏の陽ざしを感じながら、実家の近所に砂場のある公園があったことが脳裏をかすめる。友達と時間を忘れて遊んでいるうち、周囲が暗くなり、呼びに来た祖母と一緒に帰宅した。あのころ見た夜が昼を飲み込もうとするような空の色が好きだった。蝙蝠の巣がある雑木林が近くにあり、そこ