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大企業病の克服に効くデュアル・システムってなんだ?

ども、しのジャッキーです。本記事は「実行する組織/ジョン・P・コッター」を読んでの、学びを抽出するものです。

知識創造理論SECIモデルの進化版SECIスパイラルを扱う「ワイズ・カンパニー」を夢中で読みまして、全12回にわたって学びをアウトプットいたしました(こちら参照)。さてさてその中の「第9章 社員の実践知を育む」の中で「自律分散型リーダーシップの育成が、ワイズリーダーの最大の責務の一つ」との記載があり、その具体的な手法として取り上げられていたのがデュアル・システムでした(こちらの記事参照)。

私自身、成熟企業に属していますので、このデュアルシステムに強い関心を持ち、原著を読んでみたいと思い読みました。原著は「実行する組織/ジョン・P・コッター」となります。コッター氏はリーダーシップの大家です。ね。

同氏の著作としては、当方のnoteでは以前に、以下の投稿で「企業変革力/ジョン・P・コッター」のまとめを取り上げたことがあります。

デュアル・システムが解決する問題

さて、本書では、組織が成長し、より効果・効率的に価値を提供するために、構築するヒエラルキー型組織を構築することは、「20世紀が生んだめざましいイノベーションの一つ」としています。その上で、ヒエラルキー組織には、新しいイノベーションにチャレンジするには、スピードが鈍るというシステム上の欠陥があるとし、以下のようなものを挙げています。

  • ヒエラルキー組織のシステム上の欠陥の例

    • チェンジ・エージェントが少ない

    • サイロ化

    • 規則や手続き

    • 四半期業績のノルマ

    • 自己満足、無気力

これらに対応するためには、ヒエラルキー組織とは別に、ネットワーク型の組織が必要であり、「あれか、これか」ではなく、「あれも、これも」、つまり、新しい組織の在り方としてデュアル・システムを掲げています。

デュアル・システムってなに?

デュアル・システムではないもの、がいくつか挙げられています。以下のようなものです。

  • デュアル・システムではないもの

    • 大規模な部門横断型タスクフォース

    • 新しいモデルに沿った戦略チーム

    • イノベーション委員会

    • 独立作業チームの設置

以前に、一橋ビジネススクールの名和氏の講演を聞いていたときに、デュアル・システムについて言及されていて、デュアル・システムは、いわゆる両利きの経営でもない、とおっしゃっていました。

本書では、デュアル・システムについて、以下のように書かれています。

新しいネットワーク型組織で運営されるのは、信頼性と効率性を旨とする系統的なプロセスではなく、スピードと俊敏性を追求するリーダーシップ発揮型プロセスである。このプロセスについては、19年前に発表した拙著「企業変革力」の八段階の変革プロセスで詳述した
実行する組織/ジョン・P・コッター, 30ページより引用

デュアル・システムの特徴

以下の2つの特徴が挙げられています。

デュアル・システムは単にマネジメントのための組織ではなく、戦略的なイニチアチブを主導して大きなチャンスをつかみ、あるいは重大な脅威を回避するための組織構造である
第二に、デュアルシステムは新しいアイデアではあるが、自派このやり方自体は何年も前から実施されていた。ただ、はっきり認識されていなかっただけである。
実行する組織/ジョン・P・コッター, 36ページより引用

デュアル・システムを図示すると以下のようになります。このネットワーク型組織の方は、動的で、くっついたり・離れたりを繰り返すといいます。以下の部分が非常に印象に残りました。

イノベーション、困難な改革、大規模な戦略イニシアチブの迅速な実行など、従来はタスクフォースや戦略部門でしのいできた仕事の大半を移管することだ
~中略~
ネットワーク組織をスタートさせ、組織の発足を公に宣言し、後ろ盾となり、両方のシステムを調整するのは経営幹部でなければならない
実行する組織/ジョン・P・コッター, 39ページより引用

デュアル・システムは以下のように図示されます。

デュアル・システム5つの原則

様々な事例から抽出された共通の項目をまとめた原則が以下の5つだといいます。

特に重要なのは、チェンジ・エージェントで、すべてはここから始まる、と書かれています。では、チェンジ・エージェントは、変革請負人とも書かれています。私の中で、「チェンジ・エージェント」という言葉は、あやふやなものだったのですが、本書の中で定義づけがされていなかったので、以下、検索上位にでてきたものを引用します。

「チェンジエージェント」とは、もともと組織開発の領域で使われ始めた用語で、組織における変革の仕掛け人、あるいは触媒役として変化を起こしていく人のことを言います。変革の当事者として、自らそれを指揮すべき立場にある経営者や組織のトップとは一線を画し、むしろその代理人(エージェント)として、変化への対応を余儀なくされる組織のメンバーとの間を仲介し、信頼関係を醸成して、改革を支援・促進する役割を担うのがチェンジエージェントの立ち位置です。したがって、組織開発の知識やスキルを持つ専門人材が適任者といえますが、近年は本来の定義を拡張し、率先して社会や組織を変えようとする人々やリーダー全般を言うことが増えてきました
日本の人事部のこちらのページより(太線は篠崎が付与)

本書では、会社の組織を変えるために、外に頼るのではなく、既存の社員のエネルギーを生かすべき、というスタンスをとっています。それが故の経営者の代理人(エージェント)の担い手が必要ということですね。

デュアル・システムの8つのアクセラレーター

ヒエラルキー組織もネットワーク組織も、どちらも規律をもったシステムとして機能させることができる、としたうえで、違うのは行動の在り方だといいます。また、ネットワーク組織は、戦略的に重要なイニシアチブを加速する行動が促進される必要があり、そのプロセスを本書ではアクセラレーターと呼び、以下の8つが挙げられています。

とても印象的だったのは最初のステップである「危機感を高める」です。これは、私の座右の書のひとつである「V字回復の経営」で示される経営行動の9つのステップでも前半に位置付けられているものです。

そして、改めて、パラパラとV字回復の経営を眺めていて、めちゃめちゃ腹に落ちてくるな、と最近読んでいなかったのを反省しました。「実行する組織」では理論化するにあたって、漂白されてしまっている部分が、やっぱり小説仕立てとは言え、実際に三枝氏がコンサルティングで実行してきた生々しさがあり、危機感を「どうやって」高めるのか、というところHowもWhatも書かれています。

機会の提言

っと、脱線したので「実行する組織」に戻ると、「危機感を高める」のところで、重要視されていたのが、「大きな機会」を提示すること、とされていたのが印象的でした。この機会の提示を「機会の提言」というステートメントにすることを強調しており、以下のように書かれています。

もっとも有望な可能性をこの場で検討し、全員で検討し、全員が共感できるステートメントの形にまとめたいと思う。短く、前向きで、勇気づけられるステートメントが望ましい。脅威や悲観的な見通しをむやみに強調するのは好ましくない。さらには懐疑的な人間や重箱の隅をつつきたがる人間にも文句を言わせないようなものでなければならない。
~中略~
機会の提言は、論理的で(背景と理由をはっきりさせる)、感情に訴え(誠実で前向きで本音である)、覚えやすい(短く明快で、専門用語や業界用語を使わない)ことが条件となる。
実行する組織/ジョン・P・コッター, 100ページおよび152ページより引用

この機会の提言は、先のV字回復の経営の経営でいえば、一番最初に置かれている「期待のシナリオ」といえるでしょう。このあたりも「実行する組織」では理論化するにあたって、漂白されてしまっていて、インパクトに欠けるので、あらためてV字回復の経営を読まんといかん、という思いを強くしました。

あ、最後に「企業変革力/ジョン・P・コッター」の組織変革の8ステップにトップ・ミドル・現場の位置づけを併記した以下の図が私はけっこう好きなので、載せておきます。

以下の記事でも書きましたが、私自身、中間管理職になって、自分自身の位置づけを考えさせられる機会が増えました。

おわりに

ということで、今回は、「実行する組織/ジョン・P・コッター」を読んでの、学びを抽出してみました。このほか、当方の経営理論に関する記事は以下のマガジンにまとめていますので、もしよかったらのぞいてみてください。またフォローや記事への「スキ」をしてもらえると励みになります

ということで「形のあるアウトプットを出す、を習慣化する」を目標に更新していきます。よろしくお願いします。

しのジャッキーでした。
Twitter: shinojackie

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