実践力のための知の源流、アリストテレスのフロネシスとは? #ワイズカンパニー #SECI #フロネシス
どもっ、しのジャッキーです。本記事は、知識の創造の理論である「SECIモデル」に関する個人的な学びをアウトプットする一連の記事の第4弾です。
私は、去年(2021年)に、「世界標準の経営理論」を読んで、「すげぇ!」と思ったいくつかの理論の一つがSECIモデルでした。野中郁次郎氏と竹内弘高氏はSECIモデルを「知識創造企業」(日本語版1996年、リンク先は新装版)の中で描き、そこから約4半世紀たった2020年に続編として出版されたのが「ワイズ・カンパニー」になります。前著が知識「創造」について書いたのに対して、本書では知識「実践」について拡張したとしています。
本投稿は、「ワイズ・カンパニー」を読み解きながら、学びをアウトプットしていく連載記事となります。
前回のまとめ
前回は、知の実践の事例としてホンダジェットの成功においての本田宗一郎氏と藤野道格氏の分析についてまとめました。
第2章 知識実践の土台
今回のまとめから、「第2章 知識実践の土台」に入ります。本章は以下の構成をとっています。
哲学における知識実践 ★今回
知識実践とポランニー ★次回
脳科学における知識実践 ★次回
社会科学における知識実践 ★次回
ここをまともにまとめると、4~5回分になってしまいそうなので、エッセンスだけを抽出したいと思います。
哲学における知識実践:アリストテレスとフロネシス
知識実践の起源はアリストテレスによる知識の3分類の1つ「フロネシス」にあるします。
アリストテレスによる知識の3分類
エピステーメー:普遍的に通用する科学的な知識
→「なぜ、を知る」知識テクネー:スキルに基づいた技術的な知識
→「いかに、を知る」知識フロネシス:価値観や原則、モラルに即した行動をとることを可能にする経験的な知識
→「何をすべきか、を知る」知識
フロネシスには以下の4つの特徴があるといいます。
フロネシスの4つの特徴:「行動・文脈・善・目的」(アリストテレス「ニコマコス倫理学」より)
フロネシスは、「行動」を起こすことにかかわるものであると言うこと。いうまでもなく、行動のない実践はない
フロネシスはその場に固有の状況、言い換えるとその場の「文脈」にふさわしい最適の行動をとることにかかわるものであること。やはり言うまでもないが、現実は時とともにかわるものである。
フロネシスは「善」の行動をおこすことにかかわるものであるということ。倫理的に優れた判断をするほうが劣った判断をするよりも良いことは明白である。
フロネシスは「目的」に合致した行動を起こすことにかかわるものであるということ。
ヨーロッパの哲学における知識実践:現象学
このフロネシス(知識実践)に関しては、ヨーロッパの哲学においては現象学の分野で、エトムント・フッサール(1859-1938)、マルティン・ハイデガー(1889-1976)、モーリス・メルロ=ポンティ(1908-1961)らによってどのように発展してきたかが示されます。以下に、いくつか印象に残ったフレーズを列記しておきます。
主観的な経験を経ることで、人間は自分にとっての世界を理解できるようになる
客観的な知識は主観的な経験を豊かにする場合のみ役立つである
主観性の共有(相互主観性)は他者への共感から生まれる
現在の状態(主観)は、過去の経験による形成された主観によって影響を受け、現在の可能性の幅に制約を課す。一方で、逆に、現在、どういう行動をとるかによって、未来の可能性を高められる。
最後のやつは、前回のまとめでも触れた、アドラー心理学の考え方を描いたベストセラー「嫌われる勇気」の中で出てくる、原因論と目的論が同時にやってきて個人的には胸アツでした。
米国哲学における知識実践:プラグマティズム
ヨーロッパに続いて、米国での動きです。1870年代から米国では、合理的な思考に偏った西洋哲学のパラダイムを疑問視し、行動における主観的な経験の重要性に着目したプラグマティズムという哲学の新しい動きがチャールズ・サンダース・パース(1839-1914)、ウィリアム・ジェイムズ(1842-1910)、ジョン・デューイ(1859-1952)らによって発展したとします。
プラグマティズムの主張のエッセンスは、以下でありフロネシスと通底するといいます。
プラグマティズムの主張のエッセンス
知識はすべて
行動を伴う
文脈に基づく
目的を必要とする
いま・ここで物事を成し遂げることを重視する
プラグマティズムとセンスメイキング理論
プラグマティズムの創始者であるチャールズ・サンダース・パース氏の解説の中で以下のような記述がありました。
これって、センスメイキング理論とすごい似ているな、と思いました。センスメイキングは、組織のメンバーや周囲のステークホルダーが、事象の意味について納得(腹落ち)し、それを集約させるプロセスをとらえる理論であり、「①環境の感知、②解釈をそろえる、③行動・行為」からなる環境とのダイナックな相互関係による循環プロセスとして表現されます。
このときに重要なのは、「行動」が起点になっていることです。周囲に働きかけるからこそ情報を感知でき、知識が形成され、その知識をまた外部環境に行動・行為を通して働きかけることで、ステークホルダーを巻き込み、客観的に見れば起きえないような事態を、社会現象として起こせる、というのが「世界標準の経営理論」の中での解説でした。
ちょっと、「ワイズ・カンパニー」の内容の先取りをすると、あとで出てくるSECIモデルの発展形はSECIスパイラルというモデルで、それは、SECIのサイクルを回し続けることで、個人、チーム、組織、社会へと知識実践の輪を増幅・拡張できる、というコンセプトになっていて、センスメイキング理論の考え方とも通底しているな、と思いました。
今回の1枚まとめ
今回の1枚まとめは、アリストテレスとフロネシスの部分を1枚にまとめました。
次回は
すでに2000文字を超えて、長くなってきたので、残りは次回にてお楽しみください!
哲学における知識実践 ★今回
知識実践とポランニー ★次回
脳科学における知識実践 ★次回
社会科学における知識実践 ★次回
おわりに
このほか、当方の経営理論に関する記事は以下のマガジンにまとめていますので、もしよかったらのぞいてみてください。またフォローや記事への「スキ」をしてもらえると励みになります。
ということで「形のあるアウトプットを出す、を習慣化する」を目標に更新していきます。よろしくお願いします。
しのジャッキーでした。
Twitter: shinojackie
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