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【詩】木陰

蜘蛛の糸が垂れ下がる
揺れながら光を反射する
イワシの群れが放つ煌めきに似た
ここもまた、海だったのだろう
そこもあそこも掘り返せば
二枚貝の化石が出てくるに違いない

(太古の記憶が前触れもなく
 姿を変えてあらわれる)

花は持った
ひしゃくも忘れず
墓石の前に立っていると
長く訪れなかった期間を
とがめる視線が向けられているようで
目をそらす

蜜柑がひとつ供えられていた
甘酸っぱい香りが
風に舞う
魅せられて
あなたが好きだった
繊細な雰囲気を醸し出す
ウスバカゲロウの行方を追った

絡みついた言葉たちを
脱ぎ捨てても、良いですか



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      イラスト、お借りいたしました
      いつもありがとうございます

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(ちょっとだけ解説)

 暑さ寒さも彼岸まで、と言いますがいっこ
うに涼しくなってくれません。彼岸には少し
早いのですが、秋が訪れてほしいと願いつつ
「木陰」というタイトルの作品を載せました。
 この詩は、一年前に岐阜市文芸祭に応募し
たものになるのですが、佳作に選んでいただ
いた作品です。(下記に証拠の画像を載せて
おきます)
 ちょうどこれを書いた時期がコロナの真っ
只中の頃でして、おそらく多くの方が、ふる
さとへの帰省を断念せざるを得なかったり墓参りにも行けない状況が続くうえで、少し治
まりかけ久しぶりに墓参りに出かけた場面を
書きました。そして、暑さ寒さも彼岸までに
はもうひとつ「どのような困難な事態であろ
うと、やがて終わりがきて乗り越えることが
できる」という意味もありますね。


 それにしても、本当に残暑が厳しすぎます。


ありがとうございました。




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