シャニ短歌のまとめと一言感想 2022.04

初めに

 シャニマス詩歌部のタグで短歌を詠み始めて約ひと月で30首となりました。これまで絵も文字もろくにアウトプットしてこなかった人間なので、これだけ続けられたことにひとまず満足しています。

 これまでにタグに流した短歌それぞれについて一言二言程度、解題というほどではない感想をまとめていきます。


・世の中はまわる私がいなくとも ラジオネームで呼ばれたい夜

 Your/My Love letter、最高でした。昨年の個人的ベストイベコミュはアンカーボルトソングだったのですが、今年もアルストになりそうな気がします。キャラを把握していないシャニ未履修の人でも読める、というかその状態でしかできない読み方があると思うので布教用シナリオとしても(長さ以外は)最高だと思います。
 歌はグッド・ネムレナイトを聞けるシャニ世界のオタクに思いを馳せていたら後半のフレーズが浮かび、前半部分を追加した形です。
 顔のない人々が個人として認められる展開を描きながらも、報酬コミュで匿名でいたい人の気持ちもくみ取ってくれるシャニマスの懐の深さ、そして何よりその心遣いがアルストっぽくて良いです。


・数学のノートに描いた微生物 円周率はもうすでに3

 浅倉周辺のクラスメイトなどのドライさに対して私が違和感を覚えるのは浅倉自身の異質さに由来する部分も大きいのでしょうが、もう高校卒業がひと昔の出来事になった私が「今の若い子」を理解できなくなっているということでもあると感じています。
 ちなみにですが円周率を3として教えられた世代は実際には存在せず、勘違いから広まったデマのようです。私もゆとり世代ど真ん中ですが3.14で習いましたね。


・ピンチにはスプラで学んだ打開策 焦らず我慢、みんなで一緒に

 薄桃色の甜花ちゃんについて。
 アルストの中で最も図太い彼女が真っ先にほころびに気が付いて、焦って下手に動くと更なる泥沼にもはまりかねないところも、現状を全員で共有して解決に導く完璧な対応にスプラトゥーン上手いんだろうなと思いました。
 以降のアルストイベコミュでもユニットの柱として、カッコいいお姉ちゃんをしている姿が好きです。


・指先の冷気を擦り合わせつつ君への第一声を推敲

 Pに待たされてどんな文句を言ってやろうかにやにやしている摩美々の姿です。
 上半身が膨らんだシルエットが似合う摩美々。


・汗だくの背中合わせて並び立つ瞬間忘れられる疚しさ

 にちかの背に常に罪悪感を背負わせる目で見てしまうのですが、パフォーマンスの間だけは本人もPも無心になれるイメージ。すぐにちかの暗い歌を作りたくなるし、暗いフレーズを見つけるとにちかに合わせたくなる。


・夢を見るために死ねるという君は未だに眠り方を知らない

 オモコロのノーカラット読む企画で恐山さんから「美琴さんはアイドルになりたいというけれどどんなアイドルになりたいのか見えない」という風な発言があったのを聞いたときにスルッと出てきたもの。
 シーズは美琴の方を一度ぶっ壊さないと始められない気がしている。


・土曜夜8週連続休むP その御役目は甜花に任せて

 ウィークリー達成のためWING1シーズンリタイアをするとき用の甜花ちゃん編成が1枠あります。


・明日より早く走り出したくて夜更けより遅く寝たふりをした

 明日と朝焼けを迷って明日を採用しましたが、夜更けの対比としては朝焼けの方が合ってるのでやっぱりそっちの方が良かったかもと少し後悔。
 慣れない夜更かしという言葉にワクワクしてなかなか寝付けない小学生の興奮。


・微睡の息染み込んだタオルケット 猫の毛みたく柔らかな春

 Feel Like Flowerの甜花ちゃんのコミュから。
 体温にほぐされて柔らかくなったタオルケット気持ちいいですよね。


・春雨に濡れて彩度を増すコート 事務所彩るハンガーラック

 歌会向けに考えていた時にメモしていた濡れて色が深くなるという要素を、412の日のコミュで雨の日に部屋を探す社長の歌にしました。下の句は無理やり付け足したので、今思えば575で止めて俳句にしても良かったのかもしれないです。


・その笑みは誰が為でもなく 『幸せは歩いてこないと誰が決めたの?』

 雛菜→幸せの単純な連想ゲームから。
 有名フレーズを正面から否定できる雛菜の芯の強さ。


・驟雨 電話ボックス叩く音が貴方の迎えを待つメヌエット

 去年のカードで一二を争う好きなコミュ、雨雨電電。
 元々は保留音と書いてメヌエットとルビを振っていたのですが、くどさを感じてこの形になりました。でもメヌエット=保留音のイメージがどこまで伝わるか微妙なのでやっぱり元の方が良かったかもしれません。


・夏空を妖しく映す銀メッキ 歪んだ雲が綺麗に見えた

 銀メッキ=偽物の言い換えで、にちか自身及びアイドル八雲なみのイメージでした。にちかには不穏な夏が似合ってしまう。
 憧れて目指したものが幻想だった事実を知ることで自分自身が偽物で得あることに気が付いてしまう絶望はロボとーちゃんやMGSが思い出され、シャニマスが偽物論にどういうケリをつけるのか、今後が楽しみです。


・「ちょこ先輩!樹里ちゃんマンに攻撃だ!」曲がるストローアンテナにして

 おとうさんスイッチのフレーズが77になってることに気が付いて使いたかったから作りました。
 放クラにはどんどん教育番組に出てほしい。工場や職人の見学とかにも行ってほしい。


第10回歌会

・磨硝子色に重なるふつおたの奥にホントの色、見つけたい 
 歌会に提出したYour/My Love letterの歌。磨り硝子色という表現が気に入っています。


・憧れは波の過去形 街影で揺れる向日葵が私を睨む
 ヴぇりべりの印象で夏のイメージが強いにちか。でもそれは陽気な正のものではなく明るいのに冷や汗をかき続けるような不気味な夏で、それを向日葵に睨まれている(ように感じる)ことで表現できてたら…と思います。
 前半は八雲なみのこと。歌会後のTwitterでも触れたが、向日葵が睨んでいる=にちかが太陽であるというギミックも成り立つと思うので、それをうまくいかせればにちかに救いを残せたかもというのが少し後悔。


・宙船の喫水線は0メートル 静かの海を漕ぐ星一つ
 歌会の4首で最後に絞り出した歌。喫水線で素直に考えたらノクチルになりそうでしたが、宇宙船にすればあさひのイメージで他と被らなさそうと思いついて月に飛ばした。
 "喫水線"の部分は"喫水"のほうが用法としては正しいですが、そちらは専門用語というか馴染みのない言葉だったのでこの形にしました。


・今もなおサイアノタイプの人波に溺れ死ぬことすらできないで
 サイアノタイプは写真現像法のひとつでいわゆる青写真。たほいやというゲームを友人と遊ぶ用に単語を探していた時に見つけた単語。
 サイアノタイプを青い景色として読むとノクチルカラーの人波(ファン)に溺れきれない斜に構えた円香として、
慣用句としての青写真と読むと未だ予想図であり実現していないファンの波の意になって(283の他ユニットに比べ)人気が出ないことへのもどかしさの歌としても読めることを狙っていました。


・クジラ語は翻訳困難 サイレントレターが省く称賛の意味

 ミュージックシェアを荒らした浅倉の「YEA(H)」について。サイレントレターとは発音しないスペルのことです。
 彼女自身には明確に見えている景色、理屈があって、でもそれを人間の言葉で出力するのはどうにも難しい。
 不思議ちゃん扱いではあるがクラスメイトとのやり取りをみるに普段はあそこまでコミュニケーション不全を起こしてないので、活字が特に苦手なのか気負ってしまったのか。


・一枚目の献血カードに記されたmL分大人びてゆく

 霧子の体重51kgは400mL献血に備えたものであるというのは有名な話。
 献血をするとスタンプが押されて一定回数ごとに粗品がもらえるというキャンペーンがあり(うちの地域だけかもしれません)、私は先日10回目を終えて2枚目のスタンプカードに突入しました。霧子はおそらく16の誕生日に献血に行っており(妄想)、霧子のカードが埋まるのは早くても霧子が18歳になって少しした頃。それを見て霧子は成人した実感を得るのかなという風なことを考えていました。


・いつまでも沸かず冷めずのぬるま湯をガラスの魔法瓶に注いだ

 放クラが青春のサビの部分であるのに対して、ノクチルは永遠に続くかに思える日常の青春。自然に在るものとしての透明な空気感がユニットの売りだが、それを見世物にすることで変質してしまうのがPとして何より怖い。
 そんな感じです。


・水煙草屋の褪せたペルシア織のソファ 鉛ガラスの鎌首重たげ

 摩美々と水煙草吸いに行きたい→吸い口が蛇っぽいなという連想。
 "鎌首をもたげ(る)/重たげ"の洒落が気に入っています。


・砂浜を征く足跡のふりだしにひっくり返ったサンダル五

 放クラの妄想コミュシリーズ。放クラは急に走り出す。
 


・ 旭日に負けじと輝く銀流し 反射・蛍光 光りゃいいのよ

 銀流しは銅などに水銀を塗り付けて銀色にする手法のことで、剥がれやすいことから偽物という意味の慣用句にもなっているらしい。
 反射も蛍光も自身がエネルギーを発して光っているわけではないが、周りを利用してどんな手段を使ってでも輝けばいいという冬優子の泥臭さのイメージ。
 中二を西尾維新に染められた人間なので偽物哲学が大好き。


・海賊のように小石をピンピンと蹴飛ばし歩く夕焼けの道

 放クラに宇宙海賊のモチーフを持ってくる発想は天才すぎ。
 古屋さんの歌詞は全体曲も含めお気に入りのフレーズが多いです。


・ 夏枯れの葉脈揺らす蝉の声 奴にも虹は見えただろうか

 夏枯れの葉脈が努で蝉はアイドルたちのイメージでした。
 4thは手紙の演出がBGM含めズル過ぎました。ああいった場面で真面目に、でもユーモアで包んで言語化できる智代子、千雪、甜花あたりのday1手紙が特にお気に入りです。


・イントロは猫の足音効くように Aメロはつぼみ弾けるように

 コロナ禍のライブのオタクのつもりで作っていましたが、アイドル側の歌にも読めるかもですね。どちらも無言ですが、その質の違いみたいなものを表現したいと思っていました。


・一同の四則演算は繰り上がり君の隣にまだ見ぬ位

 数数娘娘のコミュ、「10に続きがあるということを初めて知った日」という着眼点に感服でした。
 ただ、特定のコミュをもとに作ろうとするとどうにも説明的になってしまうので、もう少し抽象的な要素から想像したほうがいいのかもしれないと思っています。


・一輪を朱で塗り潰す花言葉 一人一人の故事は忘れて

 個人的に昔から花言葉というものが好きではなくて、「情熱」といえば書けばいいところに脈絡なく薔薇を配置するような表現は、薔薇の花自体をただの道具かおしゃれなフォントとしてしか見ていないように感じてしまいます。
 摩美々もそういう感覚に共感してくれそう、そういうもどかしさを抱えていてほしいと思って彼女についての歌にしたのですが、自分の地雷をキャラに押し付けてしまったようで少し申し訳ないです。


・海の底にはきっと何もなくて沈んだ砂金だけ輝いて

 浅倉のことを想像したときに浮かぶ、透明で、だだっぴろくて、煌めいている光景についてです。
 


・君の祈りも流れ出す心地して献血バスの窓に目をやる

 霧子の献血の歌②。
 シャニマスをプレイし始めてから毎年限度いっぱい献血に行くようになりました。自分の腕から結構な勢いで出ていく血の流れを見ていると自分の生についての想像がぐるぐると巡り、不思議な落ち着きと非現実感を同時に覚えます。そんなトリップをしていると400mLもすぐに終わってしまうのですが、献血バスの外には現実の地元のショッピングモールが広がっているのがなんとなくおかしく感じて詠みました。



終わりに

 短歌がうまくなってるかどうかは正直全然わかりません。他の人の歌を含めて良し悪しの区別がそもそもついていないので、作るだけじゃなくシャニ外の現代短歌についても読むことを始めてみようかなという感じです。

 ここまでお読みくださり誠にありがとうございました。

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