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この本が好き 「のはなし」 伊集院光著

「のはなし」はラジオパーソナリティの伊集院光さんの短編エッセイ集で、全ての話が「〇〇の話」というタイトルであいうえお順に並んでいる。現在4巻。

「ああああ」の話から「んかきそこねもの巻き」の話で終わるのは4巻の「のはなしし」。

ここで書かれている話は特にこれと言うジャンルはない雑多なエッセイ。ラジオ番組の裏側だったり、思い出話だったり。すごくいい話で感涙みたいな話が並んでいるわけでもなく、買ったガジェットでうんぬんみたいな話もそんなにない。

どこが面白いの?と聞かれると全部。人物や風景の描写が面白くて、いつものラジオの感じ(夜の方)で読んでしまう。

「クセのある川魚から発せられる臭い」の限界を大きくクリアした。横を歩いていたかみさんが臭いから逃げたい一心で知らない国の路地を闇雲に走り出したことからも、そのパワーがうかがい知れる。

というのがホーチミン市の市場の話。他にも師匠の話だったり、中学時代の思い出だったり。体重の増減だったり、おすすめ甘栗情報だったり。

やらなくてもいいことを人以上に無駄にやりこんで、毎日を過ごしている感じが最高だ。ラジオで話すため、なのかもしれないけど過剰だ。おかしい人だ(いい意味で)

頼まれていないのに機材を買い込み、自転車ででかけてツイキャスし、コミュ力の高い奥さんの車ででかけ、目の悪い犬とおならでコミュニケーションをとって。

この本の好きなところはそのポジションのとり方だ。できないやつ、ダメなやつに対して適度に優しい。どこにも行き場がなかった頃の自分の代弁者でありたいとするところが本当に好きだ。

今の僕は、あの頃、根拠のないプライドと現実のギャップに耳をかさないために布団の中で吠えていた言葉を、ここに書いたりマイクの前で喋ったり、たまたまお金がもらえているだけのことだ。何も変わっていない。 〜のはなしにぶんのいち〜

黒でも白でもない伊集院光さんの本。ただ、時々グッとくる話が入っているので注意。お父さんに「お前が死んだ後も世界はずっとある」とか。

おすすめ本でした。

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