名言の真実

日本中の男子高校生が崇拝する神、エガちゃんがついにYouTubeチャンネルを開設した。エガちゃんがピンで面白いことは、これまでの「ピーピーピーするぞ!」で明らかだったので、こりゃあもう楽しみしかない。

ギャグをやっている時は本当に馬鹿馬鹿しくて、ぽつんと喋りだすとどこまでも気のいいおっちゃん。

そんなエガちゃんには、ネット上で彼が残したと言われる名言も多い。エガちゃんねるの中で、その名言を本人が言ったかどうか判定するという企画があった。今回はこれについて書いてみます↓


エガちゃんの名言の中で一番有名なのはおそらくこれだ。

生まれた時から目の見えない人に 空の青さを伝える時 なんて言えばいいんだ? そんな簡単なことさえ言葉にできない 俺は芸人失格だよ

私は中学生の頃にまとめサイトでこの名言を初めて読んだ。エガちゃんにこういう思慮深いところがあることに驚いて、純粋に感動した。誰かを笑わせることを真摯に考えた先で笑いの限界に気づき、それでも笑いで世界を変えたいともがく一途な男なのだと思った。

その後震災時のニュースなどを見て、ああやっぱりエガちゃんの根本には、誰かのために何かをしたいという強い思いがあるのだと腑に落ちるものを感じた。


ところが、先ほどの動画を見て驚いた。この名言はエガちゃんが言ったものではないというのだ。

私はその名言が本物であると信じていたのに。

信じていたものが足元から崩れていく・・・ほど私のネットリテラシーは甘くない。まあそうか、嘘だったんだなあ、という程度だ。中学のインターネットの授業でネチケットを学んでいてよかった。・・・ネチケット?ネチケットってあの授業でしか聞いたことがないけれど、実在する言葉?方言とかじゃないよね。・・・ググって安心した。死語だそうだ。

懐かしすぎる言葉のせいで話が横道に逸れてしまった。

けれど、たしかに改めて読むと不思議な名言である。「目の見えない人に空の青さを伝えられない俺は芸人失格」は、少しズレている。芸人であるエガちゃんが言うのなら「目の見えない人もどうにかして笑わせたい」の方が近い気がする。


となると、この名言を考案してネットに書き込み、エガちゃんの名言として広めた人がいるのだ。そう考えるとちょっと面白い。私がこの名言に触れたのはまとめサイト黎明期だったので、犯人は今30代後半から40代前半の男だろう。

彼が、かの名言「生まれた時から目の見えない人に 空の青さを伝える時 なんて言えばいいんだ? そんな簡単なことさえ言葉にできない 俺は芸人失格だよ」を生み出した。

ずいぶんとポエジーな男だ。エガちゃんという人間味あるフィルターを介さないと、この名言はどこか寒々しい。やはり名言は、何を言ったかではなく、誰が言ったかが重要なのだと改めて知った。

イチローが「後悔などあろうはずがありません」と言って格好いいのは、積み上げた記録があるからだ。北島康介が「ちょー気持ちいい」と言ってフィーチャーされたのは、金メダルを取れたからだ。

破局報道のあったにゃんこスターのスーパー3助が「後悔などあろうはずがありません」と言っても、「ちょー気持ちいい」と言っても、それは格好良くない。

それは3年間不倫をした東出も、タピオカ襲撃予告犯の木下優樹菜でも同じことだ。「後悔などあろうはずがありません」の、あろうはずがありませんという古風で格好いい言い回しさえ寒々しくなる。

やはり名言には、それなりの背景が必要なのだ。

この世界のどこかで、エガちゃんの名言を捏造した男はいま、なにをしているのだろう。いつか彼が名言を残すほどの業績を積み上げ、かの名言を自身の名言として発表する日が来ればいいなと思う。そうなると、世界はきっと面白い。


彼に敬意を払って、次のnoteでは、有名人の名言を捏造して、twitterででも流してみようと思う。私もインターネットの歴史に名を刻んでみたいのだ。




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