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岸和田祭だんじり囃子/篠笛之栞(しおり)

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岸和田祭だんじり囃子の篠笛の栞(しおり)です。指孔の押さえ方、音の出し方、手入れの方法などを完結にまとめます。連載終了後(令和3年9月上旬を予定)、冊子にまとめて、民の謡(たみの… もっと読む
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音を出す〈005〉

初めて笛を吹く人は、まずは、指孔を押さえて構えるのではなく、笛の両端を持って、つまり、すべての指孔をあけた状態で、音を鳴らす練習をしましょう。〈001〉でも述べましたが「吹くのではなく響かせる」という気持ちが大切です。太鼓でも三味線でも、あらゆる楽器には「勘所(かんどころ)」があります。力を強くすれば大きな音が鳴る、良い音が鳴る、というわけではありません。笛を吹く時の息の強さや太さにも良い「塩梅(あんばい)」があります。 とはいえ、初めて笛を吹く場合には、その加減はわからな

指の押さえ方(運指番号)〈004〉

岸和田の地車囃子の笛では五つの音を使います。旋律を聴くと、もっと多くの音を使っているような印象を受けますが、使う音は五つのみです。日本の古典的な旋律や歌、わらべ歌、祭囃子などは、四つ、五つ、時には三つの音を組み合わせるだけで、多彩で魅力的な旋律を生み出してきました。 地車の笛は、見よう見まねで覚えることが習慣ですので、五種類の指の押さえ方に特別な呼び方はありません。しかしながら、それぞれに番号を振っておくと便利です。例えば「7の音をもっと大きく」とか「2に音がカスレている」

篠笛の数字番号〈003〉

篠笛の管頭には文字が記されています。「獅子田(ししだ)」の場合は「七」という漢数字が見えますが、文字が崩れている場合も少なくなく、数字であるという認識で見ないと、片仮名の「メ」に見えてしまいます。 「七」と認識できた人も、この数字の意味するところに悩むでしょう。指孔の数は六なので、これに歌口を加えて「七つの孔」を意味するのでは?と推測した人もいますが、そうではありません。 「七」という文字は、笛の「音高」を表しています。「七」があるということは「六」や「八」の笛も存在する

身体にたとえる篠笛の部位名〈002〉

篠笛の話をする時に、「あの部分のあそこの色」とか「あの糸みたいなんが(籐のこと)」といった表現では、うまく会話がいきません。 笛を選ぶ時はもちろん、笛を教える時にも、各部の名称を知っていた方が会話が円滑に進みます。 このコラムでも以下の笛の部位名が頻繁に登場しますので、まずは、ここで確認しておきたいと思います。 歌口(うたぐち) 息を当てる孔が歌口です。実際には管全体の空気中が響いて鳴っているのですが、笛の音の音を生み出す起点となる重要な孔です。「歌口の中心に唇を持って

岸和田祭だんじり囃子・篠笛之栞(しおり)001

祭の笛は地元の先輩方から教わることで、その奏法や旋律が継承されています。岸和田および岸和田型地車(だんじり)文化圏でも、同じように、小学生の子供たちが青年団のお兄さんや、お父さんに教わりながら見よう見まねで笛を吹き始めます。基本的には、このような方法で問題はなく、また、健全な状況とはいえますが、まれに、継承がうまくいかないことがあります。 岸和田における、その最たる例が、二十年ほど前に始まり、今でも尾を引いている、篠笛の「極細管」や太鼓の「均等打ち」の問題、「笛を酒に浸ける