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ミッドワイフ、はじめての超音波検査

はじめてのアポ

子供は3人目、といっても、カナダでの出産の経験はない。日本では妊娠がわかれば産婦人科の一択だったけど、こちらではミッドワイフという選択肢も一般的。聞いてはいたけどミッドワイフって何が違うんだろう、果たして病院に比べて安全なのかな?選ぶメリットってなんなんだろう?DDも懐疑的。自宅出産とか原始的なお産の光景を連想しているよう。自分も基本的なことから分からなくて調べてみた。

病院、というか産婦人科医(obstetrician/gynecologist, OB/GYN オブジーンと略して呼ばれる)はメディカルスクールで高度な医学トレーニングを修了、外科手術やハイリスクの妊娠に対応できるのに対し、カナダのミッドワイフは四年生大学で専門の学位を取得、ローリスクの妊娠のケアや出産の立ち会い、産後の母親と乳児のケアを主に行う。産婦人科医を選んだ場合、出産は病院になるけど、ミッドワイフの場合、病院やバースセンター、自宅での出産も可能。
一番の違いはミッドワイフはあくまで自然分娩に限るということ。帝王切開など外科手術が必要なケースやハイリスクな出産は産婦人科医にしか対応できない。ミッドワイフ立ち会いの自然分娩を予定していたのにかかわらず、緊急にハイリスクな医療行為が必要な事態が生じた場合は直ちに病院と連携して処置が行われるので安全面の問題はないよう。

よし、今回はミッドワイフにしてみよう。というのはミッドワイフの場合、妊娠出産に特化してるからもっと丁寧な対応をしてくれるのかしら、と思ったから。それだけ前回の病院の雑な対応に傷ついたのだ。ググってみて見つけた数件のミッドワイフセンターのうち、家から割と近くてホームページもいい感じだったところに電話してみることにした。

30分は保留のまま待たされる病院と違い、さっと受付の人が対応してくれた。名前、生年月日、最終月経なんかを手際よく質問される。28日周期を基にしてるんだろうけど出産予定日を割り出し、受付可能と言われる。なんでも本当ならその月は出産予定で埋まっていて、対応できるミッドワイフがいなかったのだけど、キャンセルができたので大丈夫だという。キャンセルって…きっと誰かが流産してしまったんだろう。すぐに最初の面談の日取りを決めてくれた。

翌週、ミッドワイフのアマンダと初対面。またも明るくハキハキ、とても有能そうないかにもアングロカナディアン。若いんだろうけど堂々として頼りになりそう。わたしは39歳と高齢だけど、ハイリスクの部類に入るんだろうか、そうだとしたらミッドワイフにお願いすることはできないのか聞いてみた。すると39歳で初産であればそうだけど、わたしは3人目、特に今まで妊娠出産トラブルもなかったので大丈夫だという。とにかく今日はざっと話をしてみて自分に合っていると思ったらケアをスタートするし、違うな、と思ったら病院に変えたらいいということで、面談が始まった。

詳細な個人情報のほか既往歴、妊娠出産歴、家族、パートナーの年齢、職業、人種、学歴、DVの有無なんかもしっかり聴かれる。これだけでかなりの時間を割いてくれて面談は全部で1時間くらいだった。病院では15分くらいだったのに。基本的に二人のミッドワイフと数人の研修生のチームで妊娠中の経過から出産、産後まで通してみてくれるから信頼関係が築かれて安心してお産に望めるというし、どういうふうに産みたいか、ということもできる限り尊重してくれるみたい。産後入院する代わりにミッドワイフが自宅に訪問するから、出産後2時間で退院、というのは引っかかったけど、面談の最後には「ぜひよろしくお願いします!」と言っていた。

わたしの意志を確認すると、予定日を確定する超音波検査のレクイジション(検査を担当するクリニックへの紹介状)を出してくれた。3ヶ月は何もしないって言われたのとなんという違い!この時点で妊娠6週とカウントされ、7週になったら予約を入れるよう指示された。

はじめての超音波検査

妊娠7週に入り、なんとなく気分が悪い。肉を見ると吐き気がするようになり、ずっとそこはかとない吐き気がする。きたな、つわり…!食欲は全然ないけど何も口にしていないと余計に気持ちが悪くなる。それでもこの時点ではなんとなく気持ち悪い、くらいで、むしろ妊娠した実感が持てて安心したくらいだった。超音波検査を前にとにかく不安だった。7週で心拍が確認できれば流産の可能性はかなり低くなるという情報を読んでから、前日は祈るような気持ちで床に着いた。大丈夫、明日心音が聞こえれば、大丈夫だから。大丈夫だから。

超音波技師のお姉さんはまたも明るいアングロカナディアン。
「はじめての妊娠かしら?」と陽気に聞いてくるので「いえ、前回は流産でした」と不安げに返すと「あら〜それは残念だったわね!今度は絶対大丈夫だから!」とやっぱり明るい。それでまた、ってことだったらどうするの、無責任だな〜と思ったけど彼女の明るさは嫌ではなくてむしろ心を軽くしてくれた。
「ほら、見て!いるわよ!心拍も聞こえるわね」
画面に映る白っぽい楕円とその中の黒くて丸い影。これが赤ちゃん、らしい。涙が出た。ああ、よかった、今度は本当にいるんだ、赤ちゃん…。予定日は最終月経日から28日周期を基に算出した日にちと一致していて少々意外だった。

この命をつなげますように、育ちますように。ひとつのヤマを超えて、安心したのも束の間、壮絶なつわり生活が幕を開ける。




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