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物語「星のシナリオ」 -24-

「は〜」

「人間は本当に悩むのが好きだよな」

「別に。好き好んで悩んでいるわけじゃないけどさ。まあ、きみたち猫よりは、色々と考えなきゃなんないこともあるよ」

「まあね。それが人間界のゲームでもあるからね」

「好き好んで悩んでるわけじゃないんだけどなー」

「星の世界にでも行ってみる?」

星の世界にボクの悩みを解決する答えがあるわけじゃないだろうけど、一人で
悩んでたって解決できる気もしない。

「なんかこういうのって、現実逃避って言うんだろうなあ。ま、いっか」

「にゃ〜」

いつからかあの星の世界に行くことは、ボクにとって生活の一部くらいに特別なことじゃなくなっているのが、何だかとても不思議な感覚だった。おばあちゃんの家に行く感覚と近い。それはやっぱり、おばあちゃんがあの星の世界の女神
だからなのか…。

「そうだよ」

「え?あーなんだ、またボクの頭の中を覗いてたんだな」

「こっちの世界じゃそれが普通のことだよ」

「そんなんじゃ、話す必要なくなっちゃうじゃないか」

「これも逆の発想だよ。本当は、言葉を交わさなくてもわかり合えるんだ。
それを地球では肉体を通して、話すっていうアクションを楽しんでいるんだよ」

「そんな、『鳩が豆鉄砲くらったような顔』すんなよ」

「ぶはーははは。猫なのに、そんな言い回しも知ってんのか!なんか笑えるな」

「きみ達人間は、言葉で遊ぶってことを楽しんでいるだけ。まあ、そんな自覚がある人はほとんどいないけどね」

いつものことだった。星の世界に来ている時や猫と話していると、人間社会でのあれこれが本当は全て、「どうでも良いこと」に過ぎないんじゃないかって感じさせられる。悩んでいることすら、「好き好んで悩んでる」なんて。それじゃあまるで…

「悩むことを楽しんでる。まるで、謎解きゲームで遊んでいるのと同じさ」

猫の言葉を聞いて、もうボクは何も言い返す気にはならなかった。本当にその
通りかもなって、どこか深いところで納得してしまっている自分に気づいて
しまったんだと思う。

ボクが今悩んでいることも、本当はどうでもいいことなのかな。

「あ。そうだ、さっきの話教えてよ。おばあちゃんの家に行くのと、この星の
世界に来るのが同じ感覚って話」

猫はチラッとボクを見て、しばらく勿体ぶってる感じだったけど、ゆっくり話し始めた。


つづく


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