見出し画像

物語「星のシナリオ」 -23-

その晩、満月の宴が開かれているおばあちゃんの家の片隅で、先生はボクに
過去世のことを教えてくれた。

まあそもそも過去世ってもんが本当にあるのかなんて確かめようがないんだけどそのことはボクも以前から「あるとわかってる」感じがしていたから、先生の話はまるで、心の中にずっとあったヴェールを一枚外すようなそんな感覚だった。

一つ前の過去世で先生とボクは、いちばん信頼し合っている仲間だった。まるで今とは役設定が逆のようで、先生は占星術師、そしてボクはヒーリングでエネルギー調整をして人々を助けていたらしい。

「その時代では身体に不調が表れる前に、その人のエネルギーを調整することで元の気に戻すという治療が主流だったんだ。病院はなくてヒーリングセンターというものがたくさんあった」

「元の…気…って!元気って、そういうことか!」

「ははは、そうだよ。今ではちょっとニュアンスが違って使われている言葉だよね」

先生は時々、夜空の満月を眺めながら過去世の話を続けた。

その時、人々から絶大な人気と信頼を勝ち得ていた先生は、そのパワーに恐れと嫉妬心を抱いたある権力者に目をつけられてしまったんだ。その権力者から放たれる執拗な負のエネルギーに、いつしか先生本来のエネルギー体が傷ついていったのだと。グッタリとしているのに、どこも傷ついた様子がなかったのはそう
いうことだったんだ。

「今の先生とボクと、役設定が逆みたいだ」

「それは今回が初めてのことじゃないんだけど、あえて入れ替えて今回の人生へ臨んでるんだ。私ときみの、魂の約束だよ」

星読みは古代から受け継がれる宇宙の叡智。それは時代が変わっても人々を確実に導いてきた。

だけれど時の権力者たちは、その圧倒的な宇宙の叡智に恐れを抱くこともしば
しばあった。それで星読みの知恵をもつ者は、何度もその命を狙われてきたと。

それでもそのバトンを繋ぐために、ひとつの選択肢として、ボクと先生は何度も同じ時代に生まれ変わっては知恵を伝える者と、万が一の時に守る者と二人三脚でやってきたらしい。

「じゃあ今回はボクが命を狙われてるってこと⁈」

「ははは。今回は大丈夫だ。もう大丈夫時代が変わったよ。それにほら。きみは絶対安全な場所に生まれてきただろう?」

「どう?魂の再会は果たせたかしら?」

「おばあちゃん」

あの夜虹を渡ってからボクは、まるで壮大な物語を読んでいるようで。どれが夢の世界で、どれが現実の世界なのか…すっかり、わからなくなっていた。


つづく


この物語はこちらにまとめてあります


サポート嬉しいです!ありがとうございます