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物語「星のシナリオ」 -19-

「わかったよ。こういうカラクリだったんだ」

母さんの独断で向かったイタリアンレストランで料理を待ちながらボクは、「星のシナリオ」で紐解いた、母さんとボクの関係の話を披露した。

ボクの水星星座は天秤座。母さんの水星星座は牡羊座。十二星座は、円を 十二等分した形で表すことができる。そうするとさ、天秤座の反対側にあるのは牡羊座なんだ。

ボクがずーっと感じてた「対極の設定」は、まさにこれじゃないか!

つまりは、母さんとボクのこの親子関係はシナリオ通りで、それはボク自身が描き決めてきた設定通りだってことになる。

ずっと、母さんのことをマイペースで自分勝手な人だとどこかで思ってきた。でも同時に自分のことも、自分の意見がなくて時に優柔不断で。でも、裏から見れば、母さんは純粋で自分に正直な真っ直ぐな人。ボクは調和を大切にする、場の空気を読める人。その二人の間で交わされるコミュニケーションは、ある意味バランスがとれてる。

「ね〜ほんと、おもしろいわよね。自分とは正反対のように感じる性質。でもこの正反対の関係は、おんなじテーマがベースに流れていたりもする」

「母さんはこの本読んだことないって、おばあちゃんが言ってたけど。母さんも星のことは詳しいの?」

「あはは」

「なんだよ、急に」

「だって。おもしろくて」

「何が」

「ううん。なんとなくね〜。自分の息子とこんな話をする日が来るとはね、と思って」

何て言葉を返せばいいかわからないボクを見透かしたように、ちょうど料理が運ばれてきた。

「うわー美味しそう!あ。あの〜すみませ〜ん。このチーズ、もう少し多い方が嬉しいわ!あ、もちろん追加料金お支払いするので。できます?」

「あ、ちょっ。母さん」

はー。まただよ。ほっんと自己中。わがまま。

「あーねえ、ちょっと奏詩」

「え?」

「いま私のこと、わがままな奴だって思ってるんでしょ。あのねえ、思ったこと口にしないでモヤモヤした気持ちで頂く方が失礼なんだから」

「まあ確かに、それも一理あるけどさあ」

「だいたいね、みんな不自然なのよ。表向きはニコニコ穏便に済ますような態度してるのに、心の中けっこう曇ってるの、気づかれないとでも本気で思ってんのかしらねえ」

「母さんみたいに人が思ってることわかっちゃう人って少ないじゃん。それに、別に好き好んで人に嫌な思いさせようなんて人いないんじゃない」

「あーわかってないなー。違うのよね。別に、自分の気持ちを正直に話すことと相手に嫌な思いをさせることは、イコールではないわ」

一瞬ボクの頭が混乱したのは、今までにない回路の話だったからかもしれない。


つづく


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