物語「星のシナリオ」 -41-
「月は獅子座で太陽は乙女座ってさ、ボクと同じじゃん!」
「あははは!『だってその方が思い出しやすいでしょお揃いの方が』」
「え?なにそれ」
「きみがあの世界で言ったセリフ」
「ええ?そうなの?」
「ま、お揃いじゃなくても、ちゃんと出逢って思い出してただろうけどね」
「魂の約束…だから?」
「うん。それに…。今回のシナリオを無事に演じきるための共演者も、完全サポート体制だしね」
無事に演じきるため…か…。
「うっかりミスなくしたかったんだね今回こそは」
「まあね。でも全ては魂の遊びだよ。そんな深刻な使命に生きているわけでもないしね」
「先生の土星は?先生の今世の最終課題はなんなの?」
「乙女座の土星。最終課題は、ヒーリングセンターだよ」
「それって…」
「そう。前世できみがやろうとしていたことだ」
「前世でやり切れなかったボク達の課題なんだね」
「ああ」
この時代に、こういう役設定の「ボク」で生きられるのは一度きり。でも、その物語はもっと大きなところで繋がっていて、仲間と役設定を変えてみたりして…。なんだかおもしろいな。
「あ、だからか!ボクもそのヒーリングセンターを手伝うんだね、きっと」
「そうだね。きみの乙女座の太陽は、そのための道しるべでもあるからね」
「ちゃんと思い出し始めてたんだ。高校生になったらさ、この治療院でバイトしたいって浮かんできたんだ。そうしたら自然と、近くにある高校が良いかなって思えてきて。そこまで辿り着いたら、悩んでいたのがウソみたいに、気が楽になったんだ」
「自分の道を思い出したんだね」
「うん。まだ今その先はどこに向かっていくのか全然見えてないんだけどさ。でも、この道を進んでみたいと思えるんだ」
「なるほど。よし、きみの想いはよくわかった。じゃあ、バイトに採用しようじゃないか。ただし、高校に合格したらだな」
「あ〜だよなあ。受験勉強しないで入れてくれれば良いのになあ」
やらなきゃ、ってやつは、ほんと気持ちを重くさせるよな。みんなで競い合ってるような緊張感も嫌いなんだよな〜。
「まあ、なるようになるから大丈夫だよ」
「入りたいところに入れるってこと?」
「いや、そういう意味じゃなくて。全てはその人の人生に必要なことが起こるから、どのみち大丈夫って感じだよ」
「…。なんかそれってさ、希望の高校に落ちても大丈夫だよって言われてるみたいなんか複雑だな。先生それ、なんの予言?」
「あはは、多感な中学生には発言に気をつけないとだな。そんな意味深な発言じゃないさ。きっと、大丈夫だよ」
「ふ〜ん」
まあ確かに大丈夫なんだろうなあ。
つい先日まで進路のことで悩んでたのがウソみたいに、ボクの心は落ち着いて穏やかになっていた。
つづく
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