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物語「星のシナリオ」 -16-


「おばあちゃん!いる?ちょっとあの本が必要なんだ!」

「今日はまたずいぶんと慌ててるねえ」

シロを抱いて玄関に出てきたおばあちゃんは、笑顔でボクを迎えてくれた。

「何か楽しそうなことが始まりそうだねえ、シロ」

「にゃ〜」

「ちょっといい?おばあちゃん。あの本を読みたいんだ」

そう言いながらボクは、おじいちゃんの書斎へと駆け上がっていた。
そこに答えがあるって知っているわけじゃない。でもあの夜、マスターがボクにかけてくれた魔法の呪文が導いてくれている気がしたんだ。

おばあちゃんの書いた「星のシナリオ」。ボクは大切なバトンを受けとったんだ。この前読んだ時は、ただの星占いの本としか思えなかったんだけど。違うんだ、あれは。

「ちょうど、ハーブクッキーが焼きあがったところだよ」

「おばあちゃん。星の世界でマスターと話してきたんだ。この本のことも知ってたよ」

「あはは。そうだったのかい。ああ、やっとだねえ。やっと、この本を受けとってくれる人が登場したね」

「これ、おばあちゃんいつ書いたの?」

「ずーっと昔だよ」

「ボクが生まれる前?それとも、おばあちゃんが若い頃?」

「もう何百年経つかねえ」

なんびゃくねん?
一瞬、おばあちゃんの冗談かと思ったけど、あんまりにも普通の顔して言うもんだから、ボクはそれ以上何を聞いて良いのか、言葉に詰まった。

「何百年前のものだけど、それをこの地上に降ろして本にしたのは、三十年前くらいかな」

「母さんは読んだことあるの?」

「ないない。あの子は、読む必要がないからね」

「ふ〜ん、そうなんだ。ねえ、おばあちゃん。これは、ただの星占いの本じゃないよね。そうだ、あの星の世界へ繋がる扉って言ったっけ」

「そう。あの世界を思い出すカギだよ」

「そうだよね!ってことはさ、この本を読んであの世界を思い出せばさ、みんなの無価値感を消していけるよね!」

「そうだねえ。そうかもしれない」

おばあちゃんの顔が少し曇ったのを、ボクは見逃さなかった。

「この本…ボク以外に読んだことある人はいないの?って言うかさ、普通に、本屋さんで売ってもらって、みんなに読んでもらえばいいじゃん!」

おばあちゃんはしばらく黙ってシロを撫でながら、何か考えていたようだった。

「私もずいぶん長いこと、この人間の世界の周波数に染まってしまったようだね」

顔を上げたおばあちゃんの目から、涙がひと粒こぼれ落ちた。そうして、でもすぐに気を取り直したかのように、おばあちゃんは話してくれた。


つづく


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