物語「星のシナリオ」 -37-
「いま目の前にある道を進めば良いってこと?」
「むしろそれ以外に何があるっていうのかな?幻の道を進む方が怖いと思うけどね」
「ああ、そうか!本当は自由なんだね!どこにでも道は在る。どこに道を作ったって良いし。でもボクが今進む道はしっかりと照らされてるんだね」
「そう。自分を信じていれば必ず道は照らさせる。それ以外は幻」
自由なんだ。自由に生きて良いんだ。
でも、自由の中に自分が歩く道は用意される。そうやって本当は、みんなが自由の世界の中でそれぞれに好きな道を歩いている。
「良い表情してるな。希望に満ちた青年の顔ってやつか」
「うん。なんだかこう…自分の内側に自分が戻ってきた感覚なんだ。パワーがみなぎってきたって言うのかな」
「おめでとう。王の帰還だな。じゃあ一つワークをシェアするよ」
「ワーク?」
「うん。今そういう感覚の自分でいる時に、ちょっと先の未来にいる自分を想像してみるんだ」
「ちょっと先の未来の自分…」
ボクは静かに目を閉じて、脳裏に未来のボクを呼び覚ましてみた。
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「例えば、もう少しこの辺り頑張ってもらうと、選択肢もぐっと広がるんですよ。この辺りのランクの学校なら、大学進学のことを考えてもいろいろ選択肢はありますし」
「へ〜そうなんですね。でも先生、奏詩って今でも充分まじめすぎるくらい頑張ってると思うんですよ、ねえ」
「ええ、お母さん。もちろん今も頑張ってますよ。だからこそ奏詩くんならもっと上を目指せると」
「上を目指すと何か良いことでも?」
「え?あ、いやだからその…。選択肢が広がるって話と…」
「ねえ、奏詩はどうなのよ。何か考えてることあるなら教えて」
「うん。ボクさ、家から近い高校に行きたいと思ってる。あそこならもう今の感じでも充分手が届きますよね?先生」
「家から近いって理由かい?そりゃまた…」
中学三年間って、あっという間だな。
この三年で自分の人生が決まってしまうようで何か窮屈な三年間だなって思ってた。部活にテストに内申点、進路…。そんなに急かされたって、この前までお気楽に小学生やってたボクにはピントを合わせるのに精一杯。それでも自分なりに考えて出した答えに絶句されちゃうっていうオチ。
「ええ、じゃあまあ。あと一年あるし、まだゆっくり考える時間もあるから」
「ありがとうございました。失礼します」
三者面談は、ボクの「家から近い」発言を境にしてすっかりトーンダウンした先生の顔が忘れられない思い出になりそうだった。
「ねえ、おもしろかったわね、あの先生の顔。ふふふ」
母さんは相変わらずで。
つづく
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