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物語「星のシナリオ」 -34-


「あー。何やってんだ」

ボクのこれからの人生は自由で、本当は選択肢もたくさんある。ああ、そうか!母さんが言ってたやつだ。みんなと比べて、みんなと同じで安心していることの方が息苦しい。そうだ。

「みんなと同じじゃなくても良い。本当は、もっと自由なんだ!」

「ふふふ…。人生のシナリオはね、星の数ほどあるんだよ。みんなが想像する以上に色鮮やか。個性豊かな物語がある」

「そうなんだよね、おばあちゃん。本当はもっと色鮮やかなのに、みんなと同じ色にならなきゃって思うから苦しいんだ。だから、自分がこれからどうしたいのかも、わからなくなっちゃうんだ」

「星の世界に触れてごらん。それぞれがもつ生年月日という暗号は、色鮮やかな星のシナリオを思い出すカギ。その入口から改めて自分や他者を見てみるとね、同じ色になろうとする方が難しいとわかるよ」

「あの本にも書いてある?」

おばあちゃんは笑顔で頷いた。

それはまるで、魔法の扉の開け方を教えてもらったような、なんとも言えないワクワク感をボクに感じさせるものだった。

みんなそれぞれの色がある。ただそれを思い出して、自分の色で在り続ければ良い。

これまで靄がかっていたボクの心に、光が差し込んできた瞬間だった。


「今日はずいぶんと真剣な顔だね」

「うん。自分の色を思い出せそうなんだ」

「星の世界へ行く必要なさそうだね」

「うん。今はこの本が先生だ」

「ふ〜ん」

ボクの答えに不満だったのか、猫は大きなあくびをして、ボクに背中を向けたままクルッと丸まってしまった。

それを見たボクは、自分の心の変化を感じていたんだ。

以前のボクだったら、誰かからボクを幸せに導く方法を教えてもらおうってどこかで思っていたけど、今は…。今は、自分次第だとどこかで感じられていて、そのことがボクをとても安心させてくれていた。

正直まだ全ての答えを見つけたわけじゃないけど、少なくともみんなそれぞれの色で良い。そのことは大きな答えの一つになっていて、とても頼もしくボクを導いてくれていた。

「それぞれどの星座で、組み合わせがどうなって、と、これだけでも何通りの『私』が描けるでしょう。そういう『私』で今世の人生を体験しようとしている。あなた自身が望んでね。もしそうだとしたら?もう、ないものねだりをしている暇はないでしょう。『こんな私』を受け入れて、そのあなたで人生の主役となり、最高の人生のシナリオを存分に体験して下さい」


つづく


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