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物語「星のシナリオ」 -12-

「金星星座は、あなたの魅力を教えてくれます。それぞれの星座は今回の人生で演じる、あなたの好みが描かれているでしょう。その『好き』を惜しみなく自分自身に与えてあげてみて下さいね。そうしてあなたが心歓ばせ満たされる程に、あなたから幸せのエネルギーが溢れ出し更なる幸せや豊かさを集めることになるでしょう」

そうだった。ボクはここまで読んで寝てしまったんだ。

この文章を読んだ時、母さんのことが浮かんだんだ。好きなことばっかりしていて、母親らしいことは適当に流しているような人。それで正直、何度も思ったことがあるんだ。母さんの人生に、ボクは必要だったのかなって。

「それで、答えを見つけてきたかい?」

「うん。おばあちゃん、やっぱりボクは、眠っている間に星の世界に行ってたみたいだね。思い出したよ」

ボクはこの世界に降りてきて、自分の好きなことを表現して生きることを選んできた。そのことを忘れずに体験するために、いちばん身近に、お手本になるような人がいること、それを生まれてくる環境に設定してきたんだ。

そのお手本が、母さんだった。

だから、母さんはボクの人生のいちばんの共演者。母さんの人生にとってボクが必要だったか?そんな心配をする必要なんてなかったんだ。

これはボクの人生。ボクの人生に母さんが必要だった。それだけだ。

「この世界は本当にいろんな体験ができる場所なんだよ。だから、たった一種類の『私』では全てを体験し尽くせなかったから、みんなで手分けをしているんだよ」

「手分けをする?」

「そうだよ。例えば、ピアニストになるようなシナリオを描いてきた人もいて、だけど同時にプロ野球選手を目指そうってのは、なかなか欲張りなシナリオでしょう。だから、音楽が得意な人、スポーツが得意な人、容姿端麗でモデルとして花咲かせる人…。それはもう挙げればキリがないけれど、みんながそれぞれだからこそ、この世界はよりおもしろいじゃないか」

ほんとうだ。そんなふうにこの世界を見たことがなかったけど、みんなが全く同じで全く同じ能力でって、そんなんだったら確かにつまんないのかもしれないな。


つづく


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