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物語「星のシナリオ」 -18-

「水星星座は、あなたを外の世界へと繋げるツールです。それぞれの星座には、今回の人生で演じる『あなた』の表現方法が描かれているでしょう。そのツールを、自分が心地良いと感じられる状態で使う時、あなたの表現は歓びのエネルギーとして周囲に届き、その先へ広がる世界を見せてくれるでしょう」

ボクの水星星座は、天秤座だ。

「周囲との調和を好むコミュニケーションがあなたの表現方法。その場の風を読み、瞬時に自分の立ち位置を把握。誰とでもスマートな会話を笑顔で交わせるあなたの水星は、あなたがリラックスして心地良く在る程に、周囲を惹きつけるでしょう」

「ね〜、だから時々考えてるんでしょ?本当の自分はどこにいるんだろうって。何を感じているんだろうって」

「母さん」

「あなたは小さい時からずっとそう。『物わかりの良い子』って、こういう子のことを言うんだなーって、なんかそういうお手本みたいな子だったよね」

「なんだよそれ」

「だからね、ちょっとだけ気になってた。本当はどうしたいんだろう、本当は何て思ってるんだろうって。私が一方的なこんな性格だから、我慢させちゃってるのかな〜とかね」

「ボクは…」

ボクは、我慢してきたのかな?確かに自分の意見をどんどん言う方じゃないし、その場の空気は、普通読むんじゃないの?

「みんなそうなのかと思ってた。今の今まで」

「あはは!だよね!天秤座ってさあ、みんなの真ん中で穏やかにスマートで居ながら、その天秤のただ一点の調和のバランス点をさ、水面下で必死にバタバタ
しつつも表面ではエレガントにしてとろうとしてたりするんだよね」

「だって、だってさ。自分が感じたことをそのまま表現するだけなら、簡単すぎるじゃん」

「ふふ。あー良かったあ。やーっと奏詩の本当の声が聞けた」

「え?」

「あなたは、自分だけじゃなく、周囲の風を読みながら、他者とコミュニケーションを楽しむこと、それもスマートに、笑顔で!ただ、今回の人生はそういう人物設定にしてきただけなのよね。あなたが決めた、あなたなのよね」

「そう、なのかもしれない」

「で、その設定って、片面から見ると、優柔不断、八方美人、あと…自分の意見がないとか!そう表現することもできるけど、裏にして見るとそれって、人に
気配りができるとか、どんな相手にでも対応できる抜群のコミュニケーション術ってやつよね」

「えーっと、ボク今、褒められてるのかな?」

「ううん。貶してもない。褒めてもない。ただ、奏詩という人物の設定を
フラットな視点からお伝えしてま〜す。あはは、あー良かった」

「母さんは、そんなボクとはまるで対極の設定みたいだね」

「お!鋭いじゃん!あったり〜」

「え?」

「ああ、ちょっと、お腹すちゃった。ねえ奏詩、あのお店行こうか!決定〜
今日の夜ごはんは、イタリア〜ン」

「はー」

いっつもこれだ。人の話は最後まで聞かない。相手のこともお構いなしで思い
ついたことを口にしてさ。結局ボクはそれについていく…。

あれ?え?あ‼︎

「そういうことか!」


つづく


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