物語「星のシナリオ」 -5-
「じゃあ、よろしくね」
母さんにそう見送られてボクは家を出た。すぐ近くに住むおばあちゃんの家に届け物を頼まれたんだ。
おばあちゃんは、母さんの母親で、ボクとはとても気が合う感じがしてとても好きだった。だからよく届け物を頼まれたり、そうでなくても一人でよくおばあちゃんの家を訪ねた。
おばあちゃんの家に向かいながらボクは、虹を渡った先のあの星の世界でのことを思い出していた。
考えれば考える程まるでおとぎ話みたいなのに、思い出す程にボクは懐かしさと安心感に包まれて、とても不思議な気持ちになった。そのせいか、いつもの道が、違う景色に感じられて。まるで、まだ夢を見ているみたいだった。
そして、おばあちゃんの家まで辿り着いた時も、何だかいつもと違う新鮮さを感じていた。
「あんなところに、星と月の飾りなんて付いてたっけ…」
たくさんのハーブや樹に囲まれたおばあちゃんの家には、いくつもの星や月の飾りを見つけることができた。
「今まで全然気づかなかったな」
馴染みの場所に、新鮮な気持ちを覚えながらボクは、おばあちゃんの家のドアを開けた。
「ああ、奏詩。よく来たね」
「うん、こんにちは。これ、母さんから」
「いつもありがとう。今日は上がってくかい?」
「うん…」
「何だか今日はずいぶんとぼんやりしてるじゃない。向こうで、何かあったのかね」
「え?向こうって…」
「聞いてるよ」
おばあちゃんは、シロを撫でながらボクを見て笑った。
おばあちゃんは大の猫好きで、この家には五匹の猫が暮らしていた。にしても…。おばあちゃんのところの猫が、あの夜のことを知っているはずもないんだけどな。ボクは何のことか知らないふりをした。
「今日のお月さまは乙女座の月だよ。あなたが生まれた日の太陽は乙女座の領域にあった」
「う、うん」
おばあちゃんが、ぽつりぽつりと話し始めた。
「自分の太陽に重なる月の日は、人生の目的を見つけるにはちょうど良い日だよ。奏詩にもし受けとる気があるのなら。星の話をしようかね」
いつの間にかボクとおばあちゃんの周りに、猫たちが大集合していた。
「その前に、お茶でもいれてこようかね」
不思議な気持ちだった。
ずっと前からボクの日常の一部だったおばあちゃん家が、まるであの星の世界に繋がっているかのように感じられて。それに、おばあちゃんは全てを知っているみたいだし、ボクはこの流れを受け入れることにした。
つづく
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