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物語「星のシナリオ」 -38-


ああ冷静に考えればやっぱりボクは自由なんだな。母さんも父さんも、ボクの進路に口出すどころか「勉強しなさい」の一言も言ったことないもんな。おまけに三者面談に来たって、先生の顔をおもしろがってるっていう。

「家から近い学校かあ。ね、おもしろい発想ね。それ私の頭ん中にはなかったな〜。ね、なんでなんで?」

「何だよその、おもしろがってる感」

「え〜いいじゃない教えてよ。あ!ねえ、あそこのケーキ食べていこっか。ね、そうしよう」

「え?母さんこの後お客さん来るんじゃなかったっけ?」

「あ!やだ〜忘れてた〜。ああ残念。まあいいわ。買って帰ろう」

「あ、じゃあボク、チョコのケーキが良いな」

「え〜?あらなんか珍しい」

「ん?」

「奏詩って、いっつも『なんでもいいよ、どっちでも良いよ』とか言って。優しいんだか?優柔不断なんだか。しっかりしろーっ思ってたけど。自分の意見も言えるのね」

「なんだよ、それ」

「ということは…。そうよね、家から近い学校って自分から言うくらいだもん。あなたなりに何か考えがあるんでしょう?」

あなたなりに…って。なにか引っ掛かるけど、まあいっか。

「ずーっとさ、『どの学校か』って視点で考えてたからよくわかんなかったんだ。でも、その三年間をどう過ごすかって考えてみたんだ。ボク、高校生になったら先生の治療院でバイトしたいと思って」

「先生って、ケガでお世話になってる?」

「うん」

「へ〜いいじゃない」

「うん」

「え?それだけ?」

「え?何を期待してるのよ」

「いやほら。なんでまた治療院でバイト?とかさ。他には?とか」

「いいわよ。話したいなら聞いてあげる」

「えーなんだよそれ」

「なにか感じるものがあったんでしょう?あの先生に」

「え、…うん」

「そ〜んなの、とっくによ。あなたが思い出す前からこっちはお見通しなんだから」

「そうなの?え、いや…思い出すって」

「あなたが描いた未来のシナリオ、思い出したんでしょう?今世で再会して、また共に歩んでいくって約束を思い出したんでしょう?」

未来のシナリオ…今世の約束を思い出す…。

「だって未来は流れて来るんだから」

また新しくボクの頭に軽い衝撃が走っていて。母さん言葉が受け止めきれず。でもまた新しく開かれた扉を前にどこか気持ちが軽くなるのを感じていた。


つづく


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