物語「星のシナリオ」 -26-
は〜。だってそんなこと
もし本当だとしたら、じゃあ今までの苦労は何だったんだってことになるよな。
「もう何だかさ、もし、自分が見たいような世界を見ることができて、体験したいことを体験できるとしたらさ…なんていうかそれって、嬉しいことのはず
じゃん。やったー望み通りの人生だ!って。はずなのに、なんでこんな…」
「そんなにカンタンに上手くいっちゃ困る。そう思って足を止めてるもう一人の自分がいるから。それに、変化しないよう今の状態を維持しようとする力も設定としてあるからね。ま、それもゲームのルール上の、幻想でしかないんだけど」
「なんかさ、本当はとってもシンプルなんだね、きっと。自分が選んで決めて
来た人生のシナリオを体験しているだけ。その体験が、もう充分だって感じる
なら、そっから自分でまた選んで決めれば良い」
「そう、本当は一人ひとりが全てを創り出せるパワフルな存在なんだ」
「ただそのことを忘れてしまってるだけなんだね」
猫と話しながら歩いた今日の星の世界までの道のりは、いつものそれより、
何倍も何十倍もの「時間」を感じた。
それはまるで、ボクの心の中に芽生えている抵抗の気持ちが、足を引っ張って
いる感じと同じようだった。
本当は、望む通りの人生が体験したいはずなのに、それを全て創造できるのが
自分自身だって思い出してしまったら、いったいどう生きていけばいいんだ?
だってそれって、わかりきったことを自分で体験していくってことだろ?まるで自分でドッキリを仕掛けて、自分でビックリして、って…
「そんなのまるでコントじゃん!」
「だから言ってるんだ。これは、そんなに深刻なもんじゃない。魂のあそびなんだって」
「でも、そんなカラクリを知っちゃったらさ、どうやって生きていけばいいん
だよ。そんなコントを真剣に一生続けていくの?」
「だから、そんなに深刻なもんじゃないんだ。ただ体験して、ただ感じるだけで良いんだ」
「ただ体験して、ただ感じるだけ…。そう言えば、前にも、ハートで感じるってことを教えてもらった気がするな」
「例えばさ、きみ達は遊園地へ行って、どのアトラクション乗ろうかって、
一日も二日も悩まないだろ。どのアトラクション乗るのが正しいんだろうって、考え込むかい?」
「しない…だろうね」
「お化け屋敷はさ、入ればお化けが出てきたりして驚かされるって知って入る
よね。でもやっぱり、ドキッとするし、怖さも感じるし、中には泣きだす人も
いるだろ?」
「う、うん」
「例えば映画だっていいよ。この映画は、ラスト五分でこんな展開で大号泣
です!っていう前評判を知っていてもさ、それでも観てみたいですと思う人は
いるし、実際目の前で観るシーンに、泣けたりするだろう?」
「う、うん。そういうのと、ボクらが体験している現実の世界は同じってこと
なのか」
「そう。きみ達一人ひとり自作自演のシナリオを体験しているだけ」
「ふー。そうだったんだね」
つづく
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