物語「星のシナリオ」 -35-
おばあちゃんが書いた本「星のシナリオ」その表紙をめくり中へ入っていくと、そこには人生の主役である自分を教えてくれる星たちのことが、色鮮やかに描かれていた。
生まれた時の星の配置。それを表したホロスコープと呼ばれる星の図からは、ボクというひとりの主人公についての情報が、本当に星の数ほど読みとれる。
例えば、月星座と呼ばれるものは「素の自分」を担当している。太陽星座は「人生の目的」を担当していて、他にも、水星、金星、火星…と、みんなそれぞれ。
これだけ知っただけでも、自分の考え方、好きなもの、目指す方向…みんなと同じじゃなくても良い。いやむしろ、その方が自然じゃん!って思えてくる。
さらには、それら各星座の組み合わせって何通りになるんだろう?それぞれの色を混ぜたら、本当に星の数ほど個性豊かな色のシナリオが存在するんだ。
「さらには生まれた日が同じでも、生まれた時間が違えばシナリオが変わってくる」
「なんだ。起きてたのか」
夢中で本を読み進めていたボクの心は、いつからか猫に読まれていたらしい。
「生まれた時間すら自分で決めてきてるんだとしたらさ、もうなんか降参レベルだよね」
「全ては完璧なシナリオなんだ」
「そうなのかもな」
「きみのその容姿だって、きみの星のシナリオを生きるために、きみ自身が選んできた。だから逆なんだ」
「逆ってどういうこと?」
「自分自身で選び決めてきたシナリオなんだから、もう既にその自分を生きているだけで幸せなんだ。他人と比べて、もっともっとと幸せを勝ち取る必要もないし、どこかに探しにいく必要もない。ただシナリオが展開されていく流れの中で、自分を忘れないこと」
「自分を忘れない」
「そう、自分で在ることに降参することだよ。他の主人公になろうと一生懸命頑張っても、そこにきみの幸せはないけど、自分のシナリオの主人公である限り、本当はいつだって幸せさ」
「うん…なんか、わかるような気がするよ。でも…。あのさ、今この世界でそうやって生きている人ってどれくらいいるんだろう?なんて言うか、自分のシナリオの主人公を生きている自覚のある人って…」
「そんなことをきみが心配したってしょうがないよ。きみが自分のシナリオを主人公としてしっかり生きている時、きみの物語に登場する人もみんなそれぞれのシナリオを主人公として生きているから大丈夫なんだよ。そうやってお互いに重なり合うことで全体の物語も素晴らしいものになっていく」
「ボクはただ、自分のシナリオに集中して生きていけばいいんだね」
「そう。ただそれだけだよ」
「星の世界が教えてくれることは、いつだって本当にシンプルだな。人間が勝手に複雑にしてるだけってやつかな」
猫の方を見ると、「そうだよ」と言わんばかりに首を動かしてみせた。
つづく
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