物語「星のシナリオ」 -6-
「ってことは、やっぱりあれは夢じゃないんだ!」
「にゃ〜」
「きみ達もあの猫みたいに星の世界へ行くことがあるの?」
一瞬、ニヤッと笑ったような気がしたけど、おばあちゃんの猫たちは何も話さなかった。
「さてと。とうとうこの日がきたね。楽しみに待っていたよ」
「おばあちゃんもあの星の世界に行ったことがあるの?」
「行ったことがあるかって?あはは。ここだけの話だよ。おばあちゃんは、あの星の世界から来た月の女神のひとりだよ」
いたずらっ子のように笑うおばあちゃんを目の前にして、ボクは少し気持ちが緩んだのか、おばあちゃんのその言葉をすんなりと受け入れていた。
いや、正確には、ボクはそれが真実だということを、ずっと前からわかってた。そんな感じがしたんだ。
「私たちはね、この広い宇宙のほんの一部でしかないんだ。だけれど同時に、この宇宙全てでもあるんだよ。一人ひとりの星のシナリオは、重なり合って宇宙全体の素晴らしい音色になる。だから、どのシナリオもとても素晴らしいもので、かけがいのないものなんだよ」
「ボクは獅子座の月を選んで来た」
「そう。あなたは、この世界がどんなに楽しいものか感じ、それを表現することに歓びを感じるセンサーを抱いてきた。それはあなたがここで、あなたと言う存在の花を咲かせるための、肥沃な大地の役目なんだよ。そのセンサーを磨いてごらん。肥沃な大地に耕してごらん。きっと素晴らしい、あなただけの花が咲くから」
そうだった。ボクがおばあちゃんのことを好きなのは、この安心感だ。
「あなたはあなたのままで良いんだよ」
いつだって、そういうメッセージでボクを包み込んでくれる存在だった。
「おばあちゃん」
「うん」
「例えばさ、生まれた時から…何て言うか、みんな恵まれているわけじゃないっていうかさ。もし、自分で人生のシナリオを決められるなら、しんどいこととか選んでこないと思うんだ」
「ああ、そうだねえ。奏詩の言っていることもわかるよ。ただね、宇宙や魂の想いは別なんだよ」
ゆっくりとお茶を飲んで、おばあちゃんはボクの方を向き直した。
「いいかい。宇宙にはね、良いも悪いもないんだ。それを決めているのは、それぞれの人間を通したフィルターなんだよ。それにね、かわいそうな人もいないんだ、本当はね。それをそうジャッジしているのもそれぞれのフィルターだ」
「うん」
「みんな地上に降り立つと忘れてしまっているだろう、自分の魂の想いなんて。特に今のような世の中はね、魂の目を曇らせてしまう誘惑が多すぎるからね」
「うん」
「例えばこの世界で、チャレンジすることを望んできた魂もいる。そういう人たちは、多くの仲間の目を覚ます係でもあるんだよ」
「うん」
「だけれど、それが特別な存在ってことでもない。誰もが本来は、素晴らしく愛された存在なんだよ」
「誰もが素晴らしい存在…。でも何でボクらは、争ったり妬んだり…」
「そうだねえ。ちょっと長いこと眠り過ぎてしまったね。そろそろ目を覚ますシナリオがたくさん必要なのかもしれないね」
おばあちゃんは優しい微笑みをボクに向けた。
つづく
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