見出し画像

光文社採用日誌Vol.3番外編 | 新書編集者による質問回答特集!

こんにちは!光文社・人事総務部の🍊です。

「光文社 夏季1day仕事体験」にご応募いただいた皆さま、ありがとうございました!

定員を大きく超える申し込みを各日にいただき、ご希望に添いかねる結果となってしまった方も多くなってしまいました。どうかご了承ください。

1day仕事体験の様子はこちらのnoteでもお届けする予定です。また、今後もさまざまな採用イベントはおこなっていきますので、ご都合が合う際にご参加いただければ幸いです!



さて、今回は、先日公開した「光文社採用日誌Vol.3」内でお知らせしておりました「Vol.3番外編」をお届けします!

第2回ミートアップ「編集者が教える、出版人講座・新書編」に登壇した2名(Tさん・Eさん)に、皆さんからの質問に回答していただきました!
分量は多くなりますが、ぜひ最後までご覧ください!


①会社の雰囲気・働き方について

・光文社の好きなところ
T:優しい人が多い。いい意味で競争意識が弱く、周りを蹴落とそうとしたりしない。
E:いろんな人がいて、それでいて各人が居心地わるそうにしていないところ。

・職場やメンバーの雰囲気
T:独立独歩。ギスギスしておらずゆるやかで、なにに対しても一家言ある人たちが集まっている。
E:社交的なのに詮索好き・過干渉ではない。かなり忙しいはずなのに、コミュニケーションに余裕がある。おだやか。

・年代を超えた社員間の交流はありますか?
E:プラスマイナス3年くらいの先輩・後輩とはそれなりに交流があり、あとは突出して面倒見のよい先輩がいる感じです。その人たちを起点に交友関係が広がるので、結論としてはイエスです。あと、部署を越えた懇親会があったり、人事主導のイベントがあったりします。もちろん参加するもしないも自由です。

・働くうえでのやりがい
T:重版やAmazonのレビューなど、読者からの評価がダイレクトに伝わること。著者からの信頼と感謝(好きな人に好きと言われるようなものです)。
E:この人の書くものをもっと読みたい、と思った人の文章が世界にひとつ増えるところ。それが世に出たときの反響。

②仕事について

・一日どのようなスケジュールで働いていますか?
T:日によって本当にバラバラです。月1回のプラン会議以外は特に決まっていません。人によっても違いますが、私は午前中は社内外でメールのチェックをして、その後原稿の整理など集中して仕事し、夜はお酒を飲むなどリラックスして過ごしています。
E:週によりけり日によりけりです。日中どんな過ごし方をしても、なんとなく1時寝8時起きのサイクルに収束するように思います。

Tさんのスケジュール
Eさんのスケジュール

・企画から1冊の新書ができるまでの期間は?
T:企画によりけりですが、スムーズに進行した場合は1年程度です。

・企画を執筆者に承諾してもらえる割合は?
T:企画会議に5本出したとして、そこを通るのが3本、著者がOKするのがそのうち2本、最終的に原稿を書き上げてくれるのがそのうち1本という感覚です。

・原稿を修正する際に意識している点や、どこまで修正が許されるのか?
T・意識しているのは、読みやすい文章にすることの一点です。修正がどこまで許されるかは著者との合意次第です。ただ、文芸作品よりは修正に寛容な人(むしろ修正を望んでいる人)がほとんどです。ほとんど変えないこともあれば、全面書き直しレベルもあります。だいたいはそのどちらでもないですが。

・編集者としてのポリシー、作家さんとの向き合い方、対立する意見があった際にはどうするのか?
T:友達にすすめられない本はつくらない。編集者は名前が残らないが著者は残るので、あまり編集者の都合を押しつけるべきではなく、個人的には著者の意見を尊重することが多い。
E:担当したことを心底後悔しそうな本には携わらない(幸い、そんな経験はありませんが)。本を1冊書いて世に出すということが、どれだけの労力を必要とし、書き手にとってどれくらいの意味をもつのか忘れない。内容は著者優先で、カバーや帯は編集部の意向を汲んでいただくことが多いです。ただ、著者に「これだったら出しません」と言われたら、たぶん編集部が折れます。

・著者とのコミュニケーションの取り方・関わり方は?
T:著者とのコミュニケーションは人それぞれです。手紙を書くこともあれば、XのDMをすることもあれば、slackグループを作ることもあります。友達感覚でいくのかビジネスライクにいくのかなども含め、相手にとって最適なつき合い方をするのが基本です。

・どういう場面で新しいアイデアが浮かびますか?
T:散歩しているときとサウナに入っているとき、プラン会議前日にひとつも思い浮かばずに焦っているとき(火事場の馬鹿力)。
E:切羽詰まって仕事に追われておらず、無理に企画案を追ってもいないとき。とはいえそんな局面はなかなかないので、何かを読んでいるときや、誰かと話しているときなど、日常のふとしたときです。

・「原石」のような執筆者と巡り会うために、普段から意識されていることはありますか?
T:まずはいろんな石を探すこと。光る石「だけ」を探すことは不可能です。打率を上げることは難しいので、打数を重ねるほうが手っ取り早いです。とはいえ原石に出会うためには、きちんと目利きのようなことをする必要は生じます。その際には何もデータはないので、自身のセンスや人間性が問われます。
E:潜在的な著者は、自分の人生をなにか特定の対象に費やしており、そしてそれにおもしろみを見出しているはずなので、その人の主観的なおもしろさと世間的な関心とをむすびつけることができれば、なんだって原石でありうるのだろうな、と思います。

・いままででもっとも白熱した企画案は何か?
T:先月は、「陽キャはなぜTikTokで踊るのか」「老衰で死ぬためには」「ダサいとは何か」などが盛り上がりました。
E:けっこう思い当たるものがありますが、「めっちゃわかる!」「本当にそう!」みたいな共感ベースの反応を引き出す企画と、それぞれがそれぞれの持論を語らずにはいられない、みたいな企画案は盛り上がります。

・ひとつの仕事をやり遂げるまでに、執筆者以外にはどのような方が関わるのか?
T:書店/取次営業担当者、デザイナー、印刷会社の方(営業担当者、DTPオペレーター)、(場合によっては)ライター……などでしょうか。そんなに多くはないですが、完全に著者だけとつき合うわけではないです。だいたい5~6人がおもに関わるとイメージしておけばよいかと。
E:社内では営業や校閲の部署、造本や進行管理にかかわる部署、電子化にかかわる部署などさまざまです。書評などで取り上げてくださるメディアの方とやり取りすることもあります。

・光文社の新書について、なぜあのような魅力的なタイトル、内容のものを出せるのか?
T:その時々の編集者、編集長のセンスです。ユニークなタイトルをつけよう(≒どこにもない本にしよう)という意志は強くあります。

③出版就活についてなど、その他の質問

・出版就活において役立つことは?
T:役立つことは人生の全部なので、役に立たないことは何もないです(何もしていなくても、生活で感じたことから企画を立てたりできますし)。なんでもやって、何かを感じ取ってください。
その際に、日記がベストですが手間なので、スマホのメモとかで言語化する癖をつけておくとよいかもしれないですね。

・出版社の職種を研究する方法は?
E:採用サイトによっては部署ごとの仕事とその連携まで詳しく説明しているものがあるので、そこでおおまかな職種を覚え、興味を引かれたものについてはさらに調べてみるなど……? 出版業界についての本はけっこうありますし、定期的に特集も組まれます(最近だと「週刊東洋経済」2024年7月13日号とか)。

・光文社新書を読者として楽しんでいるが、作り手を目指すにあたっては、新しい興味を提供できるほうがよいか?
T:両方備えていることがベストではある。絶対条件は前者で、十分条件が後者という感じ。
E:新しい書き手・見たこともない切り口は、全出版社が求めているはずです。ただ、ジャンルという大きな枠組みで見れば、各社・各レーベルの差はそれほど大きくないと思います(だいたいどこも網羅的です)。それでも特定のレーベルを楽しめるのであれば、それはその切り口や見せ方に馴染めている証左だと思うので、その感覚があるならひとまずは大丈夫な気がします。

・編集者に求められる能力について、段階ごとに教えてください。
T:新人はとにかく「これがやりたい!」という初期衝動が必要。中堅になると、自分の幅を広げる意識や自社にないジャンルに挑戦するような俯瞰の視点が必要。ベテランになると(たぶんですが)たくさんいる著者・企画を厳選して、場合によっては後輩に引き継ぐようなマネジメントが必要なように思う。

・編集者になるうえで、大学3年次から習得しておくべきスキルや知識はありますか?
T:スキルは気にしなくてよいですが、知識はなんでもあるとよい。定量化できるものではないので、これくらいとは言えないが、どんな方向の知識でもいいので、自分のコミュニティ(サークルとかゼミとか)のなかでは突き抜けてほしい。
E:むずかしいですが、強いて挙げればコミュニケーションスキルとか、編集者として以前に広く求められそうなものでしょうか……。あと、本の「中身以外」の部分について、いろんな蓄積があると強いと思います。知識については、狭く絞れば出版業界とそれを取り巻く環境について。広く捉えれば人類にかかわるあらゆる知識です。

・コミック、雑誌、新書の編集で求められるスキルや素質の違いはありますか?
T:「編集」という行為の本質はどの領域でも変わらないので(なんなら新規事業も同じ)、スーパーな人はなんでもできます。よく言われるのは、フィクション(HOW)を作りたいか(才能を最大化したい、プロデュースしたい)、ノンフィクション(WHAT)を作りたいか(自分の考えた企画を具現化したい)といった志の違いでしょうか。でもこれも重なりがあるので、明確な違いというほどではありません。スキルというよりは方向性の違いだと思います。

・雑誌、小説、新書などの、本の形態の違いによる編集の仕事の違いは?
T:あまり気にしすぎないでいいですが、フローをつくりたいのかストックをつくりたいのかという違いはあるかと(前者が雑誌やテレビ番組で、後者が書籍や映画)。とはいえ両者の境界は溶けつつあります。ある作品(たとえば小説)の、雑誌連載時の印象と単行本になった際の印象の違いなどを自分なりに分析するとよいのではないでしょうか。

・大学生のうちにやっておいたほうがいいことはありますか?
E:どうにかして企画につながらないか、という切迫感とは無縁に日々の生活を満喫すること。「うまいな」という知的な感心ではなく、「どうしようもなくいいな」という心底からの感動をひとつでも多く経験すること。そしてそれを知的に分析すること。

・光文社やほかの出版社においてもっともよかった新書とその理由
T:もっともというのが難しいのですが、『サラ金の歴史』(中公新書)や『完全教祖マニュアル』(ちくま新書)などは真面目さとユニークさのバランスが際立っているのでよいと思っています。弊社の本だと『バッタを倒しにアフリカへ』はその流れに位置づけられると思います。
E:ひとつには決められませんが、わぐりたかし『地団駄は島根で踏め 行って・見て・触れる《語源の旅》』(光文社新書)は印象に残っています。タイトルもそうですし、「滋賀には『急がば回れ』のT字路がある」という裏表紙側の帯文も、1ページめの写真も、なにからなにまでズルいなあ、と思います。「よさ」の尺度はひとつじゃないですが、間違いなくよい新書です。

・今後、紙媒体の出版物の魅力をどのように伝えていくのか?
E:前提として、紙の本に固有の性質はありますが、それが時代の流れに左右されない普遍的な魅力と言えるかはわかりません。いわゆる単行本(とりわけ文芸)であれば、デザインや紙などの装幀にこだわり、ある種の嗜好品として提示していくことは可能だと思います。あと、読書体験に差が生まれる、とする線もありえるかと。ふだんサブスクでしか映画を観ない人でも、坂本龍一のコンサート映像なら映画館での鑑賞に2000円を払うかもしれません。とはいえ紙にこだわりすぎず、むしろ電子の可能性を追求するほうが、結果的に出版文化(≠出版業界)を利すると思います。

・「届ける」というテーマのなかで、どのように動いていらっしゃっているか?
T:めちゃくちゃ難しいし、届けられていないです。書店というメインの流通ルートだけでなくSNSも当然やってますが、それでも届かないなと日々感じています。近年、届けることはつくることよりも難しいです。そこに真摯に向き合うのは大事だし、そこをきちんと考えている人は強いです。
E:偶発的なバズ頼み、あるいはインフルエンサーひとり勝ち、以外でちゃんと話題になる本をつくることができるかは、業界全体で喫緊の課題になっているところだと思います。たとえば、書店さんからの注文を精査して妥当な冊数を無駄なく配本する、などの施策は効率的かもしれません。ただ、書籍というメディアのいいところは、効率性という原理の外で、思ってもいなかった、しかし振り返ってみればたしかに必要としていた、明確な宛先としては想定されていなかった人や場所に届くところだと思います。だからこそ、本当に買う人がいるかどうか定かではない書店に、それでも数冊は新刊が並ぶ必要があるのだろう、と。採用コピーの「光を届けろ!」が念頭にあるだろうご質問に返すならば、思いがけないところも照らすことができるからこそ、光は光なのだと思います。効率至上主義に陥らない余裕を残すためにも、ちゃんと効率的でないと厳しいのかもしれません。


以上、ミートアップに登壇した新書編集者2名の質問回答でした!

このnoteでお届けできること以上に、熱く濃い内容をミートアップではお届けしておりますので、ぜひ次回以降にお越しください!


ようやく暑さのピークも過ぎ、いよいよ就活に本腰を入れる方も多くなってくるころだと思います。
皆さまのお役に立てるような情報をお届けできるように努めますので、またぜひご覧ください!
次回の更新もお楽しみに。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?